刑務所の文化祭で、楽しい休日を

秋!それは文化祭シーズン。各地の学校では、学生たちが準備に力を注いだ屋台やパフォーマンスが並び、秋の冷気を吹き飛ばすほどの熱気が満ちる――そんな季節です。ところが先日、「文化祭」という言葉からは縁遠いと思われる場所で、変わらない盛り上がりが見られました。それが府中刑務所です。

11月3日、府中刑務所で「第50回府中刑務所文化祭」が開催されました。全国の刑務所では刑務作業や職業訓練、各種指導を通じて受刑者の更生・社会復帰を支援し、再犯防止を図っています。国民の被害防止と、安全で安心な社会の実現につながる重要な取り組みであることは言うまでもありません。では文化祭の目的ですが、矯正行政への理解を深めるために、法務省の「社会を明るくする運動」の一環として毎年実施されています。市民参加型のイベントで、広報展示や刑務作業製品の販売・体験に加え、普段は立ち入ることのできない施設内部の一般公開も行われます。そんな貴重な機会に触れようと足を運びました。

早朝7時から刑務所の門前は長蛇の列で、高揚感で満ちていました。開会式では府中市長、刑務所所長らが一堂に会し、テープカットの光景も。航空自衛隊も駆けつけ、大盛り上がりの様子に、筆者も期待が膨らみました。

文化祭にのぞむ数多の参加者たち(11月3日、筆者撮影)

開会式の様子、澤選手も一日所長として駆けつける(11月3日、筆者撮影)

テープカットの様子(11月3日、筆者撮影)

いざ会場内へ足を踏み入れると、そこには活気あふれる多くの屋台が広がっていました。まず目に飛び込んでくるのは、全国各地の刑務所で作られた木工製品・布製品・革製品など、多種多様な刑務作業製品を販売するブースの数々です。丁寧な手作業による仕上がりが随所に感じられ、沢山の来場者が製品を買っていました。フードブースも多く、府中刑務所で作られたという数量限定パンはもちもち食感で人気でした。

府中刑務所製パン(11月3日、筆者撮影)

特に印象に残ったのは、「模擬心理検査」コーナーです。少年鑑別所や法務省少年支援センターで実際に活用されている心理検査を体験できるもので、心理専門官による検査を知る貴重な機会となりました。少年鑑別所は現在「法務少年支援センター」として、学校や福祉機関、NPOとも連携し、地域における非行防止や青少年支援の拠点となっているとのこと。刑務所の文化祭という場で矯正・更生支援の裏側にある専門的な取り組みを知ることができ、非常に学び深い体験でした。

さらに、府中刑務所で製作された家具展示も見応え抜群。机や棚など、どれも高い技術がうかがえる品ばかりでした。オーダーメイドの木製千社札を依頼できるということで、思わず注文してしまいました。

会場中央のステージでは近隣中学校・高校のブラスバンドが演奏を披露し、消防・警察・自衛隊の広報車両展示も行われるなど、イベントはまさに地域ぐるみの参加型。家族連れから高齢の方まで幅広い来場者でいっぱいになり、終始温かな熱気に包まれていました。

庁舎の外観(11月3日、筆者撮影)

中でも最大の目玉は、普段は立ち入れない刑務所内部を巡る「プリズンツアー」。写真撮影は禁止のため記録は残せませんが、その分、目に焼き付けるように見学しました。

中は、年季の入った団地と学校が融合したような印象でした。窓の一つ一つに施された檻が、ここが「自由の制限された場所」であることを示している反面、公園風の空き地、体育館、ステンレス製の浴室など、意外にも充実した施設が備わっていました。作業場にはミシンや木工用工具が並び、干されたタオルや作りかけの製品が置かれているなど、生活と労働が日々営まれている様子がリアルに感じられました。受刑者が心身を整え、社会復帰に向けた技能を身につけるための環境が整えられていることが伝わってきました。

ツアーを通して、府中刑務所が受刑者の再犯防止と社会復帰支援に真摯に取り組んでいる姿を直接見られたことは、大変貴重な経験でした。今後の社会で共に生きる人々が、再び罪を犯さず生活していけるよう支える――矯正行政の意義を改めて実感する文化祭となりました。

 

参考資料

第50回 府中刑務所文化祭