利尻島・礼文島に海洋ゴミが漂着 日本の昆布に異変

北海道の利尻島・礼文島へ行ったことがあります。一昨年のことです。海産物の産地として有名な島々で、なかでも利尻昆布は関西地方の老舗料亭でも使われている最高級品です。稚内で獲れたものも利尻昆布と呼ばれますが、その中でも利尻島や礼文島周辺のものは別格とされます。

なぜ、利尻島周辺の昆布は珍重されるのでしょうか。これには地形が大きく関係しています。島の中央にそびえ立つ、標高1,721mの利尻富士から流れるミネラルや栄養分が地層へと浸み込み、海中にある無数の湧き水が昆布を育んでいるのです。

雲に覆われた利尻富士の山頂から礼文島を望む

2023年9月21日筆者撮影

しかし、今、名産の昆布は危機に瀕しています。「収穫量が減っている」と昆布問屋の方は話します。昆布生産量の9割を占める北海道で24年に前年比で3割減ってしまいました。漁業従事者の高齢化や担い手不足に不作が追い打ちをかけ、供給量が減少しています。そのため、卸値は過去最高値を更新。昆布屋の方から「礼文島ならまだ安いから、買っていきなさい」とお聞きし、筆者は5袋ほど購入しました。

 また、温暖化による海水温の上昇も影響しています。昆布は冷たい海でよく育つため、水温が高すぎると、昆布の根元が弱ってしまいます。

しっかりとした天然の昆布

利尻島からフェリーで約45分の礼文島では、世界の課題が浮き彫りになる光景を目にしました。ゴミが流れ着いていたのです。文字を見ると、中国や朝鮮半島から漂流してきたのが分かりました。一度流出したプラスチックごみは、紫外線や波の影響を受けて細分化されます。最終的にはマイクロプラスチックとして海底へと沈み込み、回収が困難になってしまいます。生態系へのダメージは甚大で、海洋ゴミから雄大な自然を守るためには、日本国内にとどまらず、世界レベルでの対策が必要です。

漂流してきたプラスチックゴミ 中国語の文字が

2023年9月23日筆者撮影

室町時代には、乾燥技術の確立で長期保存が可能になり、昆布でだしを取る風習が関西を中心に広がります。昆布は日本料理を支える重要な伝統食品です。京都府内の日本料理店で働く友人によると、「ほとんどが海外のお客様だ」といいます。それだけ日本食の人気が高いことがわかります。日本料理に欠かせない昆布。需要が増えていることも、価格の高騰につながっているのではと考えます。室町時代から続く日本の文化を絶やさないためにも、漁業を守る必要があります。

北海道へは一人旅でしたが、利尻島で出会った観光客の方と利尻富士に登頂したり、祖父母世代のご夫婦のレンタカーに同乗させてもらい、一緒に島内を観光したりしました。また、利尻昆布を使用したラーメンを提供するお店へ行く機会にも恵まれました。お店の立地が、離島であり、営業時間が午前11時半〜午後2時と短いため、最もたどり着くのが困難なラーメン店の一つと言われています。こうした旅先での一期一会も旅の醍醐味です。

利尻昆布の「だし」がベースのラーメン

5月から7月頃には「花の浮島」と呼ばれるほど、彩り豊かな景色が広がります。来春にはぜひ足を運び、美しい自然と昆布の将来を考えてみてはいかがでしょうか。

 

参考サイト

稚内・利尻・礼文観光WEBサイト

 

参考記事

2022年7月31日、日本経済新聞電子版、『昆布不作が映す食文化の危機』

2024年12月10日、朝日新聞SDGs ACTION!、『海洋汚染とは? 主な原因や現状、影響、私たちにできる対策を解説』

2025年6月20日、日本経済新聞電子版、『ワカメ4割高、不作が影 海水温高くノリ・コンブも』