本を読むってこういうことか!

本を読むってこういうことか!
今朝の朝日新聞に載った記事を読んで、思わず感嘆してしまいました。

朝日新聞社・出版文化作業振興財団が主催する10代のための読書会「オーサー・ビジット郊外編」という催しの第27回に、『村上海賊の娘』で本屋大賞を受賞した作家・和田竜さんが招かれ、和田さんの既刊『小太郎の左腕』を読んできた中1~大学生までの若者が集まりました。世代別の班に別れた参加者は和田さんから出された「『小太郎の左腕』という小説の改善点を具合的に指摘する」という宿題に挑みます。

『村上海賊の娘』をはじめとし、『のぼうの城』、『忍びの国』など戦国時代を舞台としたヒット小説を数多く執筆する人気作家の和田さん。そんな彼が一般の学生に自らの著作の改善点を要求する奇想天外なこの宿題には、「参加者に編集者になってほしい」という思惑がありました。一見、作家一人の手で作り上げられているように見える小説ですが、編集者側からの指摘も重要になってきます。その編集者の役割を、読者という視点も兼ね備えた参加者に任せるというのが和田さんの目論見でした。

意見発表の時間になると、参加者からの鋭い指摘が飛び交います。和田さんはその指摘の一つ一つに質問を重ね、まるで本物の企画会議のような空間になっていたそう。

記事ではいかに貪欲に創作活動に打ち込むか、作家のこだわりに焦点を当てていましたが、併せて私が驚いたのは「こんな本の読み方もあるのか」という点でした。

自分一人で本を読むときには、登場人物の感情を想像する、背景にある作家のメッセージを読み取ろうとするなど、深く読んでいるようで「本を読む」という型にはまった読み方ばかりしてしまいます。けれど上の読書会のように「書く側の視点で読む」という本の読み方は斬新でした。
この部分はもっとこうした方がよいのではないか、この人物をさらに深めるために、こんなシーンを挿入するべきではないか…。「面白い本」という回答を導き出すために、ただ作品を理解すること以上の想像力を引き出して読んだ作品を「自分だけの作品」にしていく。

それで作品自体に何か変化があるわけではありません。けれどそうやって本を読むことによってつく創造力、読解力、そして物を創ることに対する面白さと興味は、何も作家になるためだけに必要な力ではないでしょう。会社でプロジェクトを企画する、人間関係において相手の気持ちを想像して読み取ろうとする。考える力はどんな場面でも役に立つでしょう。

本を読む人は、それだけ多くの人生を過ごしている。大学の授業で教授が言っていた言葉です。いろんな本を、いろんな読み方で。若者の読書離れが騒がれる昨今ですけれど、読書会に参加した若者のように、読むこと自体を楽しめる人が増えるといいですね。

参考記事:
28日付 朝日新聞朝刊(大阪10版) 14面 「こだわって最高の物語」