活字離れが叫ばれています。読売新聞では、今年の1月末から2月の初めまで「読解力が危ない」という連載を1面で掲載し、読解力低下の原因として本離れを指摘していました。
そんな中、青森県八戸市に、市が運営する書店「八戸ブックセンター」が昨年12月オープンしました。注目すべきは、売れ筋商品である漫画や雑誌は扱わず、専門書などを置いていることです。興味をそそられ、出かけてみました。
ブックセンターは、現市長である小林眞氏の政策公約「本のまち八戸」を目指す取り組みの一環として開設されました。市内には、書店が数店舗あるほか、日本最古の公営図書館でもある市立図書館も存在しています。以前あらたにすで取り上げたような(村運営のスーパー?)自治体が運営しないと他にない、といった理由ではありません。
施設のミッションは「本を読む人を増やす、本を書く人を増やす、本でまちを盛り上げる」ことです。そのために、様々な工夫がなされています。
施設内には、おしゃれなイスが何個も設置されていて、飲み物を注文することもできます。ドリンクには、アルコール類もあり、ビールを片手に本を読む、といった贅沢もできます。
他にも、本棚に囲まれて本を読むことができるスペース、ハンモック席など、夢のような読書スペースが用意されていました。取材中は空いている席はありません。中には居眠りをしている人もいましたが。
本棚も、普通の書店と大きく異なります。スタッフが特定のジャンルごとに選んだ書籍が並べられ、小さな書店では見かけることが少ない海外文学や、人文・社会科学、芸術などといった大人向けの幅広い分野の書籍を手に取ることができます。
「本との出会い場」という点では、これまで訪れたことのあるすべての本屋の中で最も優れていると思います。しかし、自分の住んでいるところにも開設してほしいと、簡単に言うことはできません。というのも、開設に1億1000万円かけ、さらに毎年4000万円の赤字が見込まれているからです。赤字の補填に税金が投入されるとなると、他の政策にお金を使ってほしいとも思ってしまいます。
それでも市長 は「市民が本と出会う場所を創出する公共サービス」と今月5日に、日経新聞で話しています。この取り組みが成功かどうかは、目に見える効果がない以上、断言はできません。それでも、自治体として、本屋として、活字離れ対策として、この事業がもたらすメリットは少なくありません。八戸市の挑戦がどう社会に影響を与えていくのか、今後とも注目していきます。
参考記事:
5日付:日本経済新聞朝刊 31面 「市営書店、教養主義への扉」