世界的ホテル誘致 公的資金投入の必要性あるか

昨日、菅官房長官は熊本県益城町を視察した後、世界の一流ホテルを日本国内に50ヵ所程度設ける考えを表明しました。今後は、訪日外国人の総数を増やすだけでなく、多くの消費活動が見込める海外富裕層の呼び込みにも注力するそうです。

確かに、ホテルを増設する必要はあります。東京五輪や関西万博が終わった後も外国人旅行者が増加し続けるかは不明ですが、ひとまず、現在のニーズには早急に応えるべきでしょう。また、富裕層の経済波及効果は一般旅行者と比になりません。計画がうまく成功すれば、インバウンド消費の大幅増が期待できるかと思います。

しかし、民間企業がホテル誘致や開発事業に投資するなら構わないのですが、政府が公的資金を投入することはリスクが大き過ぎます。土地選びに失敗したら、税金の無駄遣いになりかねません。

外国人観光客が訪問する都道府県には偏りがあります。観光庁のデータによると、昨年1年間の外国人延べ宿泊者数は9428万人ですが、人気上位の東京、大阪、北海道、京都、沖縄の5都道府県のみで60%超を占めます。

東京や関西の中心部での需要は非常に大きいものの、大型ホテルを新たに建てられる広いスペースは限られています。建てることが出来たとしても、ホテル周辺の観光地や交通輸送網のキャパシティも大幅に拡充しなければ、オーバーツーリズムの問題がさらに悪化するでしょう。居住者の不満が募るだけでなく、旅行客の満足度も低下し、観光地としての評価が長期的に下がることもあり得ます。

一方、地方のリゾート地の中には、受け入れや開発の余地があっても、不景気の影響でゴーストタウン化している場所も少なくありません。軽井沢や伊豆半島など、日本有数の別荘地や温泉街でさえも、地区によっては高齢化と過疎化が進んでいます。豪華なホテルを建てても、人はあまり来ないでしょう。

的確な土地選びは難しく、リスクは非常に大きいと思います。計画を実行する前に、十分な検討を重ね、国が主導する必要が本当にあるのか見直すことを強く要望します。

 

参考記事:

8日付 日本経済新聞朝刊(大阪12版)5面「世界的ホテル 国内に50ヵ所」

 

参考資料:

国土交通省観光庁「宿泊旅行統計調査報告(平成30年1月〜12月)」

https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/content/001312884.pdf