教科書に載っていることは正しい。ならば丸暗記しよう。
こう思う中学生は多いと思います。事実、ほとんどの授業や試験は教科書をもとに構成されています。
来春から中学校で使う教科書の検定での結果が発表され、政府の意向が色濃く反映された教科書となりました。これに対し、韓国は8日、旧日本軍の慰安婦問題について「正しい認識」を伝えるための教材を作ったと発表しました。この韓国の対応は、想像していた通りです。
7日の朝日新聞で、ドイツ国立博物館の館長がインタビューに応じ、戦後70年を扱う特別展について、ドイツ一国ではなく、ドイツが大戦中に占領した10カ国も含めた国々の関係を扱っていると話しています。私は、これだ、と思いました。複数の立場から物事を見ることの重要性です。
今回改定された教科書は、その「複数の立場」ではなく、日本政府の見解を記述する、ことを強調しており、これまで以上に自国の立場から書かれた教科書になりそうです。
そうであれば、教科書に頼りすぎない教育をすればいいのではないか、とも思います。社会科見学として、多様な立場から歴史について展示された博物館に足を運んだり、海外の教材を使ったりするなどです。それこそ、韓国政府が今回作った教材を考察するのはどうでしょうか。
しかし、受験や試験に向けた現在の詰め込み教育では、そのような「教科書外」の教育をする時間があまりないのが現状です。ならば、その教科書にこそ複数の立場を入れる必要があるでしょう。
政府見解が色濃く載った、一つの視点からの教科書を「あらゆる考えのうちの一つ」と教えることなく、教科書に依存してしまう今の教育。その教育がこの先も続く中、その教科書で本当にいいのでしょうか。
7日付 朝日新聞(12版)オピニオン面「戦後とは」
7日付 日本経済新聞(12版)総合面「政府の意向色濃く」
7日付 読売新聞(12版)総合面「領土の記述 倍増」
9日付 朝日新聞(12版)国際面「慰安婦問題 韓国が教材」