「ホワイト!」
2週間ほど前、東アフリカに位置するウガンダで現地の人から言われた言葉です。北部の田舎町を訪れ、レストランのバルコニーで昼食をとっていた時のことでした。突然、通りすがりの男性2人がこちらに向かって現地語で何かを叫んだのです。
現地語が理解できず何を言っているのかわからなかった私は、現地のコーディネーターに尋ねました。彼は、思いがけないことを言いました。
「ホワイトって言ってるんだよ。君たちがホワイトだから。」
ホワイト???私の頭の中は疑問符でいっぱいになりました。モンゴロイドに分類される日本人にかけられる言葉は「イエロー」に違いないと思っていたからです。そして、ある歌を思い出しました。
それは、ジョンレノンの「Happy Christmas (War is over)」。中学2年生の冬、英語の授業で歌った歌です。その中に、このような一節があります。
And so happy Christmas (そう、これがクリスマス)
For black and for white (黒人も白人も)
For yellow and red ones (黄色人種も先住民も)
Let’s stop all the fight (戦いを止めよう)
black(黒人)でもwhite(白人)でもなく、自分はyellow(黄色人種)なんだ。この時、この歌詞を見てそう感じたのを思い出しました。
数日後、今度は移動先のルワンダで、現地に住む日本人に尋ねてみました。
「私たちモンゴロイドはイエローと呼ばれるものだと思っていました。でも、ウガンダではホワイトと言われたのです。あなたもホワイトと呼ばれますか。」
すると、彼女はこう言いました。
「アフリカの人は、これまでyellowって概念を持っていなくて、blackかwhiteで判断していたんじゃないかな。でも、最近はそこに新たにChineseって区分が増えたから、私はChineseって呼ばれることが多い。」
ウガンダ・ルワンダの両国では、中国の圧倒的な存在感を感じる機会が多くありました。移動する先々で目にする建設物は、日本由来ではなく中国系。
これから建設されるという巨大なダムやホテル、大学の建設予定地も見ることができました。ルワンダ北部の田舎町では、中国とルワンダの国旗が書かれた小さな建物をいくつも発見しました。日本が建設したとされる橋や道路もありましたが、中国の強い資金力には引けを取っている印象でした。
2018年のアフリカとの貿易額は、日本が170億ドル(約1兆8020億円)。対する中国は、6倍の1160億ドル(約12兆3000億円)です。アフリカにおける日中の影響力の差は、以下のエピソードにも見てとれるでしょう。
今年8月、横浜市でのアフリカ開発会議(TICAD、日本が国連などと共催する)には、アフリカ連合(AU)から過去最多の42か国の首脳級が参加したが、中国が昨年、北京で開いた「中国アフリカ協力フォーラム」の53か国には及ばなかった。
日本政府高官は「中国はアフリカ諸国にTICADには出るなと圧力をかけた。日本に向かう途中で引き返した国もあったようだ。」と証言する。(17日、読売新聞朝刊より)
もちろん、これまで日本が行ってきた開発援助や支援に対する国際評価の高さは、単なる資金力と比較できるものではありません。とは言え、今後のアフリカの成長と発展を考えれば、存在感や影響力の劣勢を見逃すこともできないはずです。
アフリカと日本の関係がより強く結びつき、YellowでもなくChineseでもなくJapaneseと呼ばれるその日は、果たして来るのでしょうか。
参考:
17日付 読売新聞朝刊(東京12版)13面(解説)「安保理改革『アフリカ争奪』」