長崎に原爆が投下されて74年。筆者も留学先の韓国で午前11時02分に黙禱をしました。
長崎にある平和公園を初めて訪れたのは小学六年生の時。修学旅行でした。
天を指した右手は「原爆の脅威」を、水平に伸ばした左手は「平和」を、軽く閉じた瞼は「原爆犠牲者の冥福を祈る」という思いが込められた平和記念像を見た時は、言葉にならない思いが。ただ、そこに建てられた記念像などではなく、長崎で生きる人々の心に寄り添っているように思えたからでしょう。
長崎育ちの筆者ですが、原爆について市内の人ほど真剣に向き合っていた訳ではありません。島育ちなので触れる機会が少なかったのです。もちろん8月9日に小学校で開かれる平和集会には参加していましたし、修学旅行で持っていく千羽鶴も1年生から6年生になるまで毎年一生懸命作っていました。それでも重くデリケートな問題なので、「被爆地」長崎の人間として生きていくには覚悟がなかったのです。長崎育ちということで原爆について質問されたこともありますが、「ごめん。島で育ったからあまりわからない」。その一言で片付けていました。
なんて薄情な人間なのだ。そう思われても仕方ありませんが、しかし、原爆を体験していない若者は今、同じような境遇にいるのではないのでしょうか。平和ではあってほしい。だからといって自分に何ができるかといえばわからない。そういう心情ではないでしょうか。原爆を知らない世代が増えていく中で、その残酷さ、そして平和の大切さを如何にして伝えていくかは喫緊の課題なのです。
先程、「被爆地」長崎の人間として生きていくことが出来なかったと書きましたが、筆者はそれでも長崎の人間としてできることがあります。それは歌を歌うことです。小学生の頃、八月が近づいてくるとクラスで練習していました。「青い空は」という題名のこの歌は原爆で亡くなっていった家族や友人たちのことを歌っています。以下、一番の歌詞です。
―青い空は 青いままで 子供らに伝えたい
燃える八月の朝 影まで燃え尽きた
父の 母の 兄弟たちの 命の重みを
肩に 背負って 胸に 抱いて
この歌にこそヒントがあるようにおもいます。難しく考えるのではなく、当時の生活や家族について語れば、若い世代も原爆について考えやすいのではないでしょうか。
伝え方は歌だけではありません。8日に連続上映1000日を超えた「この世界の片隅に」もそうです。朝日新聞ではなぜこれほどロングランしているのか触れています。
―映画の原作は、広島出身のこうの史代さんの同名漫画。原作にほれこんだ片渕監督は、たった独りで制作準備にとりかかった。6年がかりで写真など数千点の資料を集め、何度も広島に通いながら、平和記念公園となっている場所にかつて存在した「中島本町」の住民たちの証言を集めた。
人々の暮らしや戦争、そして原爆が、幻やフィクションではなく、確かな現実だったと感じてもらうためだった。
被爆地とは異なりますが、筆者が驚いたのは毎年多くの人でにぎわう長岡花火大会にも復興の願いが込められていたことです。以下、長岡花火財団のホームページからの引用です。
―今から74年前の昭和20年8月1日。その夜、闇の空におびただしい数の黒い影-B29大型爆撃機が来襲し、午後10時から1時間40分もの間にわたって市街地を爆撃。
(中略)見渡す限りが悪夢のような惨状。言い尽くしがたい悲しみと憤りに打ち震える人々。
そんな折、空襲から1年後の21年8月1日に開催されたのが、長岡まつりの前身である「長岡復興祭」です。
私たちは普段生活している範囲の内で、原爆や戦争を考えることは出来るのです。お気に入りのアーティストの動画を見るために動画サイトを開けば、ついでに歌を聞いてみる。週末に時間があれば映画館に足を運んでみる。
広島では今日と明日、原爆投下直後の様子や復興への思いが歌詞や振り付けにこもる「広島音頭」をメインに「ひろしま盆ダンス」が開かれます。
盆踊りにのせて平和を祈りましょう。明日が今日よりもっと良い日になりますように。
参考記事:
8月10日朝日新聞朝刊一面「核、長崎の危機感 原爆投下74年」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14134913.html?ref=pcviewer
8月10日朝日新聞朝刊社説「被爆地の訴え 首相には聞こえぬか」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14134786.html
8月10日朝日新聞朝刊「(声 共に考えよう)原爆とは何でしょうか」
https://digital.asahi.com/articles/DA3S14134783.html
8月9日朝日新聞「この世界の片隅に、連続上映1千日に 異例のロングラン」
https://digital.asahi.com/articles/ASM876VQ4M87PITB013.html
8月9日中国新聞「復興・平和願い 盆ダンス踊ろう」
参考文献:
長岡花火 公式ウェブサイト
https://nagaokamatsuri.com/learn/