大学無償化は十分でない 余資なき努力家のために

「偏差値って結局金だよな」と友人から言われたことがあります。その時は否定しましたが、よく考えてみるとその論理には頷ける点があります。学びにどれだけの金額を使えるのか。結局は家計に頼ることが多く、出自に左右される現状があります。

「学校の授業だけで大丈夫だ」「塾は甘えだ」「天才は金をかけなくても勉強する」。そう思う人もいるでしょう。学校の授業が学びの基盤であることは間違い無いと思いますが、それで十分かどうかは、個人差によります。塾を必要としない人もいれば、学校の授業についていくのでやっとという人、発展的な内容に挑戦したい人、需要は様々です。しかし当然、義務教育以外には費用がかかります。

塾だけではありません。高校や大学は多少なりとも入学金や授業料がかかります。

かつて、有名な大学には夜間開講の学部学科が多く存在しました。昼間働きながら学ぼうという人向けに比較的安価に開講され、有名な芸能人でも夜学出身者は多くいます。私自身も、昼間に働き夕方から授業を受ける「夜学生」です。しかし時は大学全入時代。「大学に行けなかった」社会人の需要が減り、夜間学部を廃止する大学が増えています。東京都心で夜間学部の募集を行う大学は2大学のみになりました。

10日、低所得世帯の学生を対象に大学など高等教育機関の無償化を図る新法が成立しました。来年4月からの施行で、国は対象となる学生や大学の確認作業を急ぐとのこと。大学進学における金銭的ハードルが下がる一方で、少し心配にもなります。家計基準で一律に判断していいものか、という点です。一般的な奨学金や補助金の基準となる、学力や家計の状況だけでは、「頑張っている人」を評価するには不十分です。学生本人の努力を認める制度にはできないものかと思ってしまいます。

大学は就職予備校ではないでしょう。しかし、大学を出ないと就けない仕事が沢山あるのは事実です。家庭や金銭的な事情で大学進学ができず、なりたい夢を諦めてしまう人を減らすにはどうすれば良いでしょうか。

参考記事

10日付 朝日新聞朝刊(東京14版)3面(総合)「「高等教育無償化」成立へ」

10日付 読売新聞朝刊(東京13S版)4面(政治)「幼保・大学無償化きょう成立へ」