国立社会保障・人口問題研究所が発表した将来推計は衝撃的だ。
2040年には世帯主が65歳以上の「高齢世帯」の40%が一人暮らしとなるという。
困った時に頼る家族がいないことの不安は、計り知れないほどのものだろう。
背景には、未婚・離婚の増加や配偶者との死別がある。
お隣さんやご近所付き合いが希薄になってきているからこそ、一人暮らし高齢者の生活を支える仕組みを改めて考えるべきなのではないのか。
すでに全国で自治体、民生委員、社会福祉協議会やNPO団体が協力した、ボランティアによる「高齢者見守りネットワーク活動」が広がっている。
定期的に行う戸別訪問や配食サービスなどをしているそうだ。
見守りサービスではITの活用も始まっている。
ロボットの登場だ。たとえば、仕事や距離の問題ですぐに会えない家族が、テルボ(写真1のロボット)を通して会話や見守りができる。
簡単・安心・可愛いをコンセプトとしているテレボはSIMカードを内蔵し、電源を入れればすぐにスマートフォンの回線に接続できる。音声機能も備えられ、ぬいぐるみに話しかけるだけで離れた家族とやりとりできる。
ドアにセンサーを付けておけば、家族は高齢者が外出したときにその情報を得ることができる。
薬の時間や日々の予定などの時間になると声を掛けてくれる。
情報技術の発展で、このようなサービスは今後ますます増えてくるだろう。
見守りネットワークの充実も、見守りロボットの実用化も歓迎したいが、それだけではない。
誰にでも簡単にできることもある。『日常生活の中で気づける些細な異常』を迅速に察知することだ。
例えば、お隣さんの郵便受けに郵便物や新聞、宅配伝票が大量に溜まっていた場合、誰でも異常に気がつくだろう。
近くに頼る家族がいない人のSOSを察知できるのは近隣住民など周囲の人しかいない。
見守りサービスをボランティアに任せきりにするのではなく、地域が一丸となり取り組んでいく課題だ。
一人暮らし高齢者の世帯が今後増えていくということは、「孤独死」や「孤立死」のリスクも高まるということだ。
高齢者に限らず若い女性でも決して無縁ではないと聞くと恐ろしくなる。
たとえ、将来私が独り身でも「人と繋がっている」と感じることができる居場所やコミュニティ、最新技術を使った仕組みが整っていて欲しい。切に願う。
(参考記事:朝日新聞 2019/04/20 朝刊 1面 『一人暮らし高齢者896万人』
(参考記事:日本経済新聞 2019/04/20 『高齢世帯、45%超が一人暮らしに 2040年の東京・大阪』)