刺身に天ぷら、炊き込みご飯やマリネの具材にまで変身してしまう水産物をご存知ですか。その名は「ホヤ」。日本では東北地方を中心に食べられています。殻には凸凹が多くみられ、見た目から海のパイナップルとも呼ばれています。
生まれが九州の筆者は上京するまで食べたことがありませんでした。大学一年生の時に初めて口にして思いのほか柔らかな食感に驚きました。水揚げしたばかりなら、もっと美味しいのだろうなと想像したのを覚えています。
そんなホヤ産地を含め、今特定の地域の水産業が苦境に直面しています。
世界貿易機関(WTO)の上級委員会は11日、韓国による福島など8県産の水産物の輸入禁止措置について、日本が逆転敗訴となる最終判断を示しました。
WTOの紛争処理は二審制のため、輸入禁止措置を認めた決定が確定します。
これを受け、韓国政府は「日本の8県の全ての水産物は今後も輸入禁止を続ける」としたうえで、「安全性が確認された食品だけ食卓に上がるよう、さらにしっかりと検査し、我々の検疫主権を維持していく」としています。
一方のWTOは、今回の判断が「日本の食品の安全性を否定したものではない」と語り、風評被害の払拭に取り組む考えにあるとも述べています。
今回の一連の流れをみて、「安全性」という言葉にひっかかりました。一体何を指すのか全く分からなかったからです。WTOと韓国政府が使っている「安全性」の意味合いには違いがあるようです。そもそも食卓に出すことのできる水産物の基準は一体何なのでしょうか。
「安全性」という言葉に「なんとなく体に悪そうだから食べないでおこう」という感情が含まれているような気がしてなりません。
子供に食べさせるには躊躇する、将来的なことを考えると怖い。そう考えてしまうのも理解できます。しかし「安全性」を思い込みや先入観だけで片付けてはいけないと思います。
日本では各省のホームページにアクセスすれば、放射性物質の計測結果やどのようなものに出荷制限要請が出されているのか知ることが出来ます。科学的に証明された情報をもとに「安全性」を理解したうえで行動してほしいのです。
「安全性」に対する偏見は韓国だけではありません。国内でもいまだに根強く残っているように思います。日韓関係が悪化している中でのWTOの判断は大きな波紋を広げています。しかし、これにより日韓関係がさらに悪化するような事態を招いてはなりません。
日本政府には8県の水産物が科学的に安全であることを辛抱強く伝えてほしいですし、私たち消費者もまた購入することで安全であることを発信していきたいものです。
参考記事:
4月12日日本経済新聞夕刊一面「韓国へ水産物禁輸の撤廃要求」
4月13日付朝日新聞朝刊二面「(時時刻刻)禁輸容認、まさか WTO一転『審議不足』理由」
4月13日付朝日新聞朝刊一面「食品輸出拡大、影響も WTO上級委、水産物の韓国禁輸容認」
4月13日付日本経済新聞朝刊二面「漁業復興へ禁輸是正を急げ」