さまざまな時の刻み方 次代はいかに

新元号の発表まで残すところ約1ヶ月となりました。日に日に関心が高まる「年号」。そもそもの始まりは2200年ほど前の古代中国にあるとされています。アジア一帯に広まり、様々な王朝が独自に定め、改元も行なわれていました。近代に入ると、キリスト誕生の年が起源とされる「西暦」が各地に浸透。現在、アジアで改元を行なっている国は日本だけです。

一方、西暦と異なる年の数え方をもつのは日本だけではありません。世界各地には、文化や歴史に由来する独自の暦が存在しています。日本は平成31年ですが、世界の暦で今は何年でしょうか。

中東のイスラム圏では、1年が354日の「ヒジュラ暦(イスラム暦)」が使われています。預言者ムハンマドがメッカから北方に聖戦したとされる年が起源で、今年は1440年。西暦が優位になった今では、宗教儀式や祝日選定などの用途に限定されつつあります。

タイの公文書で使われているのは、釈迦が入滅した年をもとにした「仏暦」です。カレンダーやビジネス文書でも西暦と併記され、今年は2562年にあたります。仏事などの伝統行事では、月の満ち欠けを基準とする太陰暦(旧暦)が用いられ、人々に親しまれています。

イスラエルには、ユダヤ教の聖典・旧約聖書に基づく「ユダヤ暦」があります。神によって天地創造が行われた日を起源とし、西暦の紀元前3761年10月7日が元年です。今年はなんと5779年。「1週間は7日間」という概念は、天地創造を終えた神が7日目に休んだことに由来するとされています。

一方で、暦の概念を持たない民族もいます。アマゾンの熱帯林で暮らす少数民族「ピダハン族」です。使用する言語には、そもそも数の概念がありません。未来や過去を区別する時制もなく、現在のみが存在しています。狩猟で得た獲物はその日のうちに食べ貯蓄しない、といった生活様式と関連がありそうです。

こうして世界の暦を見ていくと、時の刻み方は千差万別だということがわかります。現在、私たちが生活で用いるのは10を区切りとした十進法ですが、時間を数えるのは12を区切りとした十二進法です。かつて日本でも使われていた太陰暦は昼と夜の長さを基準にしており、日中の長い夏と日没の早い冬では時間の長さが大きく異なりました。

そもそも、時間の感覚も人それぞれです。楽しい時間は一瞬ですが、つまらない話を延々と聞かされる時間は永遠のように感じられます。歳を重ねるごとに時間の流れが早くなっていくのは気のせいでしょうか。

新元号の発表日もあっという間に迎えることでしょう。平成生まれの私には初めての改元ですが、昭和生まれの人にとって平成は短かったのか、それとも長かったのか。新しい時代が全ての人にとって一瞬に感じられるような幸せな時代になることを祈ります。

 

参考:

26日付 読売新聞朝刊(東京13版)8面(国際)「世界各地 独特の暦」