沖縄県宜野湾市にある米軍普天間飛行場を名護市辺野古へ移設する現行計画への賛否を問う県民投票が14日、告示されました。辺野古移設を阻止したい玉城知事ら県政与党と、現行計画を進める意向の政府・与党の対立が一段と激しくなることは確実です。
さて、住民投票と言えばその自治体固有の問題について、その賛否を住民に問うことが多一般的です。安全保障問題や外交に密接にリンクする今回のような住民投票は異例のことでしょう。
投票の際には、「賛成」「反対」のみならず「どちらでもない」の3択から意思表示を選べます。しかし、結果によっては、住民投票を推し進めた玉城知事自身の首を絞めることになりかねません。
まず、住民投票自体に瑕疵、つまり欠陥があると感じます。先述の通り今回のテーマは外交と安全保障。どちらも国の専管事項です。軍備を急速に拡大させる中国や核開発をやめる気配が見られない北朝鮮情勢を踏まえて、たとえ米軍基地であれ自衛隊基地であれ、またそれが日本のどこにあるにしても、その恩恵は日本にいる人すべてが等しく享受します。にもかかわらず、沖縄県民の意向で日本全体の安全保障環境が揺らぐことは好ましくないでしょう。その危険性を、この住民投票は秘めています。
また、そもそも地方自治は国の選挙と異なり住民が政治に参加する度合いが高く、玉城知事自身も住民の直接投票で選ばれています。にもかかわらず、それに加えてさらに住民の直接投票で個別の政策の是非を問うのは二重の手間、屋上屋を架することになりませんか。
重要な政治問題について住民の意向を正確に把握したい思いは理解できますが、それなら何のための沖縄県議会なのか。何のための県政なのか。それらの存在意義を下げてしまわないか心配です。一義的にはそうした難しい課題を解決するために議会も知事も存在するはずですから。
もし、知事の期待通り「反対」の票が圧倒的なら、住民投票を推し進めた知事は引っ込みがつかなくなる可能性があります。法的拘束力のない住民投票の結果の如何に関わらず政府は計画を進める意向ですから、両者の対立はさらに激しくなるでしょう。そんな状況になって得するのは誰でしょう。
この間にも「世界一危険」と評される普天間基地は残り続け、住宅街の上を航空機が飛び続けています。自民党政権を猛烈に批判し続けた民主党政権ですら辺野古の代替案を見つけられなかったのですから、結局のところ「普天間飛行場の残存」か「辺野古へ移設するか」の2択しかない気がします。
要らぬ手段で要らぬ対立を生み出しつつある住民投票。議会制民主主義が定着している日本で果たしてどれだけ意味があるのか。投票の先が心配で仕方ありません。
参考記事:
15日付 読売新聞朝刊14版 4面(政治)「安保問う県民投票 異例」