少し仰々しい言い方ですが、カフェのない生活を想像するとゾッとします。読書のため、勉強のため、改まって話をしたい時、デートコースの一つに、旅行の合間に…。あらゆる場面で重宝しているのは、筆者だけではないと思います。これが無ければどこにいけば良いのか。そう思うほど、カフェは気軽に足を運べる特別な空間です。
そんな筆者が今日の朝刊で目に付いたのは、「コメダ、全国制覇」の見出し。大手コーヒー店チェーンのコメダ珈琲が、今年6月に青森県内への出店を予定しているそうです。コメダ珈琲にとって青森県は唯一の未出店地域。6月の出店によって47都道府県出店を達成します。2015年には同じく大手コーヒー店チェーンのスターバックスが鳥取県へ出店し、全国制覇を果たしています。
一見して喫茶店・カフェ業界は好況であるように感じますが、一概にはそう言えないようです。
確かに業界の売上高は年々増加しています。帝国データバンクによると、喫茶店・カフェ経営業者1180社の2017年の売上高は、6415億3200万円で前年に比べて4.6%も伸びています。ただし、この売上高のうち66.3%が年商上位10社によるものです。大手チェーンの店舗増や既存店の売り上げ拡大が、業界売上高を下支えしているのが現状です。
一方、業界の7割は売上高1億円未満の企業が占めています。2017年度の喫茶店倒産件数は61件(前年度比29.8%増)で、経営に行き詰る事業者の増加が顕著になっています。個人経営の店舗では、大手チェーンやコンビニコーヒーに負けないために、顧客からの信頼の獲得が課題になりそうです。また、店主の高齢化や後継者不足をどう乗り越えるかも課題になっています。
ところで、筆者が留学中の韓国では近年カフェが増加しています。韓国国税省の調査によると、国内のカフェは2014年の2万5151店から2017年の4万3457店に急増しています。3年間での増加率はなんと72.8%。専門知識が無くても開業できるため、不況のあおりで脱サラを強いられた人が相次いでカフェを立ち上げたことが背景にあるようです。
言われてみれば、韓国の友人と遊びに行くと、必ず「とりあえずカフェに行こうか」ということになります。ソウル市内を歩いていると店の数の多さに気がつきます。繁華街では1区画に必ず1軒、中には隣り合っている所も。
さらに驚くのはその多様さです。韓国では独自路線を追求する店も多く、定番の猫カフェはもちろん、犬カフェ、サメカフェ、スヌーピーカフェ、飛行機カフェ、個室カフェ、レゴブロックカフェ、ボードゲームカフェ…。挙げ始めたらキリがありません。
そして魅力的なのはサービスの充実度です。チェーン店も個人経営店も無線Wi-Fiの設置は当たり前。禁煙化の徹底、携帯の充電サービスなど、一日中いても不自由しません。旅行客がカフェ巡りをする姿もしばしば見かけます。
翻って、日本も負けてはいられません。箱根や浅草といった観光地には、昔ながらのムード漂う喫茶店がいくつもあります。旅人の休息にはかかせません。まもなく全国制覇を達成するコメダ珈琲も、愛知発祥の「モーニング」を全国に広め、カフェ文化の多様化に一役買いました。東京と大阪で姿が異なる「たまごサンド」は興味深い一品です。他にもパンケーキ、レスカ、クリームソーダ、あんみつ、あんこトースト…。そして、挽きたての豆で淹れた温かいコーヒー。日本の喫茶店だからこそ味わえる品位と空間があります。
この週末、カフェで一服してはいかがでしょうか。
参考記事:
7日付朝日新聞朝刊(東京13版)8面「コメダ『全国制覇』
参考文献:
帝国データバンク「特別企画:喫茶店・カフェ経営業社1180社の経営実態調査」