中学受験に物申す

本日の読売新聞夕刊の10面に掲載された「中学受験 首都圏熱く」という記事。記事では、1都3県の受験者数は昨年よりも増加し4万6800人と、5年連続で増加する見通しであることが紹介されていました。

小学5年生の頃、友人から「2の2乗は4なんだよ」と、小学校で習っていない算数(数学)の知識を教えてもらったことを覚えています。その友人は中学受験を見据え、塾に通っていました。

このような中学受験が過熱する背景には、「大学受験」の存在です。高校受験をすることなく、大学受験のための勉強をすることができる中高一貫校は、受験においてかなりの成果を上げています。たとえば、2018年の東大の合格者数ランキングを見ると、1位の開成高校から18位タイの甲陽学院高校・武蔵高校までで、すべて中高一貫校という結果となっています。そして、2020年に控える大学受験改革では、知識の詰込みだけでは対応できないといった危機感も、こうした中学受験人気に拍車をかけているとのことです。

ただ、中学はあくまでも「義務教育」です。教育基本法によると、義務教育について次のように規定されています。

義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。(教育基本法5条2項)

そして、ここでいう「自立的」という文言については、かなり解釈が難しいところではありますが、「自己決定」といった意味が含まれているとされています。つまり、社会で生きていく以上、自ら物事を決定する力を養うことが、義務教育において一つの目標となっています。そのため、中学卒業時に自分の進路を決断する、具体的に言えば、志望校を選ぶことは人生の中でも重要な通過点であり、義務教育のゴールと捉えることができます。

そう考えると、9~10歳という年齢で、かなりの数ある中学校の中から選ぶという決断は、少し酷であるような気がします。他方、保護者が学校選びの決定権を持ってしまうと、本来高校受験で経験すべきことをしないまま義務教育を終えてしまう可能性があります。だから、「大学受験」のための中学受験ならしない方が、教育上正しいのではないでしょうか。

もちろん、筆者は中学受験をしていないため、このような懸念は実際には杞憂であるのかもしれません。また、中学受験自体が首都圏特有の現象であり、地方では当てはまらないのかもしれません。

ただ、自分で自分のことを決めることは、つい最近も大学生が自己決定の難しさについての嘆きが投稿されていたように(人生に覚悟を)、人生において何度も訪れる重要なことなのです。

参考記事:
25日付 読売新聞夕刊(東京4版)10面「中学受験 首都圏熱く」