時代おくれの女になりたい

♪目立たぬように はしゃがぬように 似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける 時代おくれの男になりたい

阿久悠作詞、森田公一作曲で1986年に発売された河島英五の「時代おくれ」の一節です。同い年からは「河島英五って、だれ?」という反応がありそうですが、彼は昭和から平成にかけて活躍した大阪出身のシンガーソングライター。昔ファンだった母がアルバムを持っていて、我が家のカーオーディオではしばしば彼の曲が流れていました。

発売年はちょうどバブル景気の入り口で、河島さんが太く優しい声で歌うこの曲はあまり人気が出なかったようです。何しろ曲名が「時代おくれ」です。しかしバブルがはじけた1991年にテレビで披露されたことで注目され再リリース、その年の紅白歌合戦でも歌われました。

歌詞では、人前ではでしゃばらないがしらけない、家族に弱音は吐かない、と一本芯の通った男の姿が描かれます。

♪ねたまぬように あせらぬように 飾った世界に 流されず
好きな誰かを思いつづける 時代おくれの男になりたい

この歌に出てくる男は格好よすぎるので、もっと人間らしく右往左往してもいいのではないでしょうか。ただ、「人の心を見つめつづける」というフレーズがとても好きなのです。うわべだけの関係や目先の利益、世間の声に流されず、まずは目の前の人の心にしっかりと向き合う。そういう人をいつか「時代おくれ」と呼ぶ日がくるのなら、自分も「時代おくれの女」でいいかな、と思います。

最近は細川たかしに八代亜紀、藤圭子などの演歌ばかり聴いている筆者ですが、読売新聞が実施した「好きな平成の歌・曲」の世論調査にはこのジャンルからはほとんどランクインなしでした。SMAPの「世界に一つだけの花」が1位なのは納得です。

今年一年、投稿を読んでくださったみなさま、ありがとうございました。2019年もあらたにすをよろしくお願いいたします。

参考記事:31日付 読売新聞朝刊(東京12版)15・16面(特別面)「(平成時代)深堀り世論調査特集(下)『世界に一つだけの花』人気の背景」