いま、廃校が熱い!再び地域コミュニティの核に

古いが綺麗に手入れされた木造校舎の中を、両親が懐かしそうに見て回る。この夏、秋田に帰省したときに田沢湖の近くにある「旧田沢湖町立生保内(おぼない)小学校潟分校」を訪れた。ここは1974年に廃校となったが、地元の人々によって2004年に修復され、現在は仙北市の管理の下で開放されている。クラフト市などのイベントも開催され、過去には同窓会にも利用されたと記録があった。

校内には、懐かしの学生鞄や当時使用していた教科書、昔の生徒たちの集合写真がそのままの形で展示されていた。両親ほどはノスタルジーにひたれなかったが、教室に並んだ小さな机や黒板を眺めていると、なんとなく懐かしい気持ちになった。

少子化に伴い、全国で学校の統廃合が進められている。地元でも、生徒数の少ない学校は大規模校にどんどん吸収されている。日経新聞の記事によると、2002年度から14年間で全国で約6800の公立学校が廃校になった。そのうち900近くが取り壊されたが、多くは福祉施設や体験交流施設、美術館、オフィスなどとして今も活用されているという。

地元にも面白い活用例はあるのだが、ここではイベントの手伝いでたまに足を運ぶ千葉県南房総市の事例を紹介したい。平群という地域では「旧平群小学校群再生プロジェクト」が進行中だ。校庭を囲む形で建っている旧平群小学校・幼稚園・保育所を残そうと、NPO法人南房総リパブリックが主体となって「へぐりマルシェ」を開催し、人々が集まる場所に変えようとしている。マルシェ(マーケット)は人集めのための一番シンプルな方法として、さまざまな場所で開催されている。

廃校舎の扱い方は全国共通の課題になっていることから、文科省では~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクトを立ち上げている。自治体が現在活用用途を募集している廃校施設の一覧を公表し、活用ニーズのマッチングを図るねらいだ。必要な改修には、他の省庁や独立行政法人が拠出する補助金を使えることになっている。

一覧を見ていると、やはり秋田は数が多い。そのまま宮城を見ていると、気仙沼市で募集施設が多いのが気になった。その一つ、2013年3月に閉校となった旧浦島小学校は、震災により生徒数の減少が大幅に加速したことがその要因になった。震災以前から統廃合が検討されていたところもあっただろうが、校舎の被災による閉校も少なくなかった。

多感な時期に多くの時間を過ごす場所だから、自然と愛着も湧く。そこがなくなったり、誰にも使われないまま取り残されてしまうのは寂しい。子どもたちの姿は見えなくなっても、必要とされるうちは、一番いいかたちで地域コミュニティの核であり続けてほしいと思う。

参考記事:8日付 日本経済新聞朝刊(東京)19面(地域総合)「時流地流 廃校舎生かすストーリーを」
旧平群小学校群再生プロジェクト
~未来につなごう~「みんなの廃校」プロジェクト