誰でも思い出の映画が一つはあるでしょう。学生の頃、出会った作品が大好きで、社会人になった今でも観ているという方もいると思います。日々の生活に行き詰まりを感じたら、一度昔の自分に戻ってみると答えが見つかるかもしれません。
「銀幕の記憶 色あせぬ1本」という朝刊のタイトルを見た時、とても無気力だった高校時代を思い出しました。高校2年生の春のことです。部活でけがをしてしまい、夏休みも練習に参加できない状態でした。時間が余っていたので、映画を何本も観ていました。映画館は何かと面倒だったので、レンタルビデオ店に行き、とりあえずタイトルで気になったものを片っ端から手にとっていました。
そして、出会った映画がチャールズ・チャップリン主演の「独裁者」、黒澤明監督の「七人の侍」「生きる」です。古いものが大好きだったので、白黒映画を観ていました。どの作品も有名で、それぞれに印象的なワンシーンがあります。
「独裁者」はラストシーンの演説がとても心に響きました。チャップリンから1対1で問いかけられているような、心の底から訴えかける姿が目に焼きついています。また、「生きる」は俳優志村喬さんの演技力に圧倒されました。まだ覚えているのは、ゴンドラの唄を歌うシーンです。表情や声のトーンで、ここまで引き込まれるのかと衝撃を受けました。
話は映画にとどまりません。人が思い出を語っている姿は、とても生き生きしていると思いませんか。なんでこれが流行っていたのか、どうして好きだったのかなど、当時と今とを比べると大きく変わったことに気付きます。
そして、「懐かしい」という感情は不思議だと、最近感じるようになりました。思い出すだけで笑ったり、時には泣いたり、色んな面を持ち合わせているからです。毎日に疲れたら、一度昔の自分に戻って、当時の感動を呼び起こしてみると、面白い発見があるかもしれません。感動作をあらためて鑑賞してみるのは、うってつけでしょう。
参考記事:
7日付 朝日新聞朝刊 13版27面「銀幕の記憶 色あせぬ1本」