食品、飲料から日用品や趣向品まで、あらゆるものが手に入るコンビニエンスストア。24時間365日利用できる利便性から、今や私たちの生活になくてはならない存在です。
近頃、店内でイートインコーナーを目にすることが増えました。1階に売り場、2階に飲食スペースを設置するなど、外食店に匹敵する広さと席数をもつ店舗も少なくありません。
その魅力は何と言っても、安さと種類の多さ、そして気軽さです。人との待ち合わせ前や用事と用事の間にわずかな時間ができてしまった時、これまではファーストフード店やコーヒーカフェを利用していました。ですが、購入や片付けに手間がかからず短時間だけの滞在でも入りやすいコンビニの方が、隙間時間を活用するのにより適していると感じるようになりました。気分やお財布事情に合わせて低価格で様々なメニューから選べる点も優れています。
そんなイートインスペースをめぐり、議論が加熱しています。販売されている飲食料品が、来年10月に導入される軽減税率の適用対象となるからです。同じ8%の商品を購入しても店内で食べれば税率は10%になるため、買った食品を店内で飲み食いすることはできません。財務省は、「飲食禁止」の明示をした上で休憩所として使うことを条件に適用する方針です。
日本フランチャイズチェーン協会は、飲食の禁止を否定しています。あるコンビニ大手幹部は、「イートインコーナーは食べるための場所」と話し、維持させる考えを示しているようです。
減税された商品を店内で食べたり飲んだりできれば、多くの問題が浮上します。競合する外食業界では、競争上の不利を懸念する声が上がっています。税負担をめぐり、客が店に不満をぶつけてくるケースも考えられます。
購入時に持ち帰りかイートイン利用かを確認して対応すべきという声もあるでしょう。ですが、コンビニの性質上、難しいと見られています。おにぎり1つ買っただけでいちいち聞かれるのは、利用側も面倒に感じるものです。酒やたばこの購入時に年齢確認されることを考えれば、不可能ではないのかもしれませんが。
もちろん、休憩場所としてのイートインにも一定の利用客が見込めるはずです。太陽が照りつける夏の日や凍えそうな冬の日には、暑さや寒さから逃れるために多くの人が休憩所を必要とするでしょう。
ですが、コンビニ側は商品の購入を促進する目的で設置しています。売り上げに繋がらないサービスを提供することは考えにくく、飲食ありきのイートインが維持されることになりそうです。
消費者の立場からすると、減税された飲食料品をコンビニ店内で食べられることが最も望ましいです。しかし、そうなれば、ただでさえ価格競争や人手不足に苦戦する外食産業はますます苦境に立たされることになります。財務省の慎重な対応が求められています。
5日付 日本経済新聞(東京14版)3面(総合)「コンビニ食品に軽減税率」