夏の風物詩、全国高等学校野球選手権大会。今年で100周年を迎えました。1世紀の伝統を受け継ぐ、日本人にとって馴染みの深い大会です。もともと高校野球への興味は全くなく、試合前後に響く空襲警報に似たあのサイレンの音も苦手でした。
私には母校の野球部に所属する3年生の弟がいますが、この数週間、家での話題は野球の話で持ちきりです。姉心に「一度くらい行ってみるか」と初めて観戦に出向きました。
雲ひとつない晴天下の試合
ルールも応援の仕方もよくわからない中、部員達が整列し、試合が始まりました。灼熱の太陽の下、投げて、打って、拾って、走る高校球児たち。そのがむしゃらな姿を見ながら、この3年間、暑い日も寒い日も朝早くから夜遅くまでひたすら学校と野球グラウンドと家の往復を繰り返してきた弟の姿を思い出しました。
以前、私はずっと気になっていたことを尋ねました。「そんなに野球ばっかりやっていて楽しいの」。すると弟は「楽しいよ。好きだから」と答えました。正直なところ、坊主頭で暑苦しいだけの青春なんてと思っていたのですが、昨日、その考えは大きく変わりました。
彼らにとって、野球は高校生活ひいては青春そのものです。その毎日がこの1試合、1球で終わるかもしれない。そう思うと、胸に強くこみあげてくるものがありました。
教師の長時間労働の原因になっている部活動は、体罰やパワハラなどの問題も抱え、思い切った見直し、さらには廃止を求める声が相次いでいます。でも、人生で1度しかない高校生活をやりきったと言える経験は、必ずその後の人生を支え、豊かにするはずです。むやみに制限したり潰したりせず、周囲にも無理のない範囲で成長期の子供たちが好きなことに熱中できる環境を整えることが、教育現場に求められています。
多くの家族や同級生が懸命に声援を送る、応援席の一体感もまた心地良いものでした。点が入ればともに喜び、打たれればともに肩を落とし、隣の人と励ましあって、選手も観客も共に勝利を目指す。人々が熱狂するスポーツ観戦の醍醐味を味わった有意義な1日でした。
幸運にも勝利した弟のチームとそれを応援する私たちの夏はまだまだ続きます。汗と泥にまみれた青春時代も送ってみたかったなと少々羨ましい気持ちにもなりました。
あなたにはどんな夏の思い出がありますか。
参考記事:
16日付 朝日新聞朝刊(東京13版)23面(東京)「第100回全国高校野球選手権記念東・西 東京大会」
同日付 読売新聞朝刊(東京14版)23面(地域)「高校野球都大会」