西日本での豪雨災害で、交通が分断されている地域があります。大雨による災害はほぼ毎年のように起きていますが、被害に対し十分な復旧がなされないケースがあります。
岡山と広島を結ぶローカル線・JR芸備線の鉄橋流失の被害を聞き、嫌な予感がしました。
新潟・福島豪雨をご存知でしょうか。東日本大震災と同じ2011年、7月下旬に新潟、福島両県の内陸側で起きた水害です。河川の堤防が決壊するなどの被害が出たことで知られています。福島県金山町では、只見川に架かるJR只見線の鉄橋が流失しました。
只見線は芸備線と同じ「地方交通線」に分類され、地元住民の足として機能しています。しかし鉄橋の復旧工事にJRは後ろ向きでした。日本では「鉄道軌道整備法」の中で、被災した鉄道の復旧支援について定められており、国や自治体が費用の一部を補助する仕組みがあります。とはいえ対象は経営する企業が赤字の場合のみ。只見線を運営するJR東日本本体は黒字経営であることから、適用の対象から外れました。
JR東日本の当初の判断は「復旧」ではありませんでした。理由は高額な工事費に見合う採算性が見込めないからで、バス路線への転換などを提示していました。地元の住民や自治体はこの案に反対し、妥協点の探り合いを続けられました。そして昨年末、ようやく決着。線路や駅などの施設を県が保有、JR東が運行する「上下分離方式」という方法で復旧のメドが立ち、発生から7年以上経った先月、着工しました。
只見線の工事が始まった頃、鉄道軌道整備法にも新たな変化がありました。激甚災害に指定されるなど大規模な災害の際に、黒字経営の鉄道会社であっても一定の条件を満たす赤字路線であれば一部を補助するという内容の改正案が、6月15日の参院本会議で全会一致により可決、成立したのです。只見線の他にも災害で不通となっている九州の豊肥線、日田彦山線などで適用される見通しです。
今回被害のあった芸備線は赤字路線。おそらくは鉄道軌道整備法を申請することになるのではないでしょうか。地元自治体にも厳しい判断が迫られます。
東日本大震災では被災した路線の復旧には多くの公費が使われました。しかし豪雨災害となると必ずしも同様とはいえません。そこに住む人にとっては、日常生活に支障をきたしていることに変わりはなく、災害の大小は関係ありません。地元の足となる交通手段を復旧させるために、国は全力で支援すべきだと思います。
参考記事:
10日付 読売新聞朝刊(東京13S版)2面(総合)「物流 道路寸断で混乱」、3面(総合)「被害把握 阻む土砂」「道路復旧が急務」
6月15日付 日本経済新聞夕刊(東京4版)3面(総合)「被災鉄道の早期復旧支援 改正法成立」
6月16日付 福島民友(ウェブ版)「只見線復旧へ工事開始 不通の川口-只見駅間、利用増加策が焦点」