W杯で学ぶお国事情

W杯ほど大きな山はないし、そこで勝つことはどの選手にとっても究極の夢だ

かつてのイングランド代表で、マンチェスターユナイテッドの黄金期を築いたウィン・ルーニー選手の言葉です。

世界にオリンピック以上の熱狂をもたらすともいわれているW杯。寝不足の日々が続いています。下馬評を覆し、躍進を続ける日本代表。予選リーグでは、決勝トーナメント進出のために行った他力頼みのボール回しで物議も醸しました。西野監督の決断には脱帽です。ですが敗退というリスクを冒しても、最後まであきらめずにゴールをめざす姿を見たかったというのが本音でした。長谷部誠キャプテンが発した「これが勝負の世界」という言葉から、大舞台に賭ける思いの強さと結果がすべての勝負の厳しさをひしひしと感じましたが。

明日未明には、ベスト8をかけてベルギーと対戦します。サッカー愛好家の間で「赤い悪魔」と呼ばれる伝統国です。アザールのドリブルとルカクのフィジカル、デ・ブライネの戦術眼、メルテンスのスピード…。多民族国家ということもあり、様々なタイプの選手を擁するタレント集団です。強烈な個に対し、日本の組織力がどこまで戦えるのか、注目したいですね。

今日の記事には、ベルギーの国にまつわる記事も掲載されていました。チョコレートやワッフルといった食べ物のイメージが先行しがちですが、深刻な「南北問題」を抱えています。北部のオランダ語系(ゲルマン民族)と南部のフランス語系(ラテン民族)にほぼ二分される連邦国家。言語圏ごとに高度な自治権があり、経済格差は根深いものがあります。国民を束ねるのは、王室とビール、サッカーの代表チームぐらいとの指摘もあるほど国民意識は希薄とされる、と書かれていました。

国民を結束させる象徴的存在とされる代表チームの快進撃は、チームの「和」を生み出す工夫にも支えられているとのこと。言語圏を巡る隔たりは、オランダ語系とフランス語系の選手がそれぞれグループを作って別行動するなど、暗い影を落としていたようです。そうした慣習を改め、今では食事をともにとり、チーム内のやり取りには英語を使うことで、黄金時代を築いてきました。

ほかにも、今大会の初戦で日本が戦ったコロンビアは、内戦がひどく世界で最多の国内避難民を抱える国だと学びました。先月行われた大統領選により、平和合意が覆される恐れも出ています。2回戦で戦ったセネガルと日本には意外な接点があります。タコです。記事によると、日本の国際協力機構(JICA)は2009年からタコ漁含め水産技術や物流を支援しています。需要の高まりで価格上昇が続くタコ市場だけに、今後さらに有力な輸出国となるかもしれません。

世界各国で愛されているスポーツだからこそ、これまで知らなかった、もしくは考えたこともなかった異文化や歴史に触れるきっかけにもできそうです。熱戦が続きますが、サッカーだけでなく、違う視点からもW杯を楽しんでみてはいかが?

 

参考記事 2日付 読売新聞 14版 朝刊7面「対立の南北 食事も言葉も一緒に」
ハフィントンポスト「セネガルってどんな国?タコの輸出で日本を救うかも」(https://www.huffingtonpost.jp/2018/06/24/senegal-octopus_a_23466530/)