【特集】どうなる?物流の未来 

今月の読売新聞の連載「密着ドキュメント」は、宅急便ドライバーの現場を取り上げています。時間までに大量の荷物を届けるために駆け出したり、山間部での配達で地域の方々と交流を大切にしたり。想像を超えた、ドライバーの苦悩や奮闘が伝えられています。

インターネット通販の拡大による荷物の急増を背景に、人手不足や長時間労働が浮き彫りとなった宅配業界。あらたにすでも、以前から関連するテーマ(一消費者としてできることは?当たり前を見直す)について考えてきました。私たちが利用している宅急便は、どのような過程を経て届けられるのか。テクノロジーの発展により、物流にどんな変革が起きているのか。疑問を抱き、陸海空の要所ともいえる一大物流ターミナル、羽田クロノゲートの見学ツアーに行ってきました。

東京都大田区にある羽田クロノゲート
 (残念ながら施設内は撮影NG)
2018年6月23日 筆者撮影

この施設はベースと言われ、地域のセンターから1日約60万個の荷物を集め、日本全国やアジアの配送センターに再び送り出されます。見学できたのは、仕分け現場です。驚いたのは、人の姿がほぼないこと。人によって一階から二階へと続くベルトコンベヤーに荷物が乗せられた後は、機械によって振り分けられます。張り巡されたコンベヤのラインに等間隔に荷物が置かれ、約10キロのハイスピードで流れていきます。

荷物の送付状についているバーコードを機械が読み取り、送り先に合わせて左右のルートにさばかれていく仕組みです。1時間で最大48,000個もの荷物を仕分けることが可能だそうです。ここまで自動化と無人化が進んでいるとは思いませんでした。

ツアー中、無人化の流れが今後更に加速されていくのか尋ねてみました。すると、「効率化も大事ですが、品質を第一に考えています」という答えが返ってきました。実はこの仕分け方法は人間が運ぶよりも、荷物にかかる負荷を減らせるようです。レーザーやカメラで形を判断するロボットアームの実験化も進んでいますが、作業の速度はまだ人間に比べ非常に遅いそう。これもまた、今はあくまでも重い荷物のみを対象に、働き手の安全を確保するために使っているとのことでした。

物流の新たな挑戦も学びました。ヤマト運輸はいま、バリュー・ネットワーク構想を進めています。これは、立地と最新の設備を生かして物流にプラスαの価値を加えるものです。移動の無駄を減らして、企業に向けて物流=コストではないサービスを提供します。たとえば、壊れた家電製品の回収や修理後の配達と同時にメーカーに代わって修理をしたり、医療業界向けに病院で使うレンタル器具の洗浄を行ったりする機能が施設内にあるとのこと。私たちも普段の生活の中で、何気なくこのようなサービスに触れているかもしれません。

施設の方は、「他社との競合で値下げを行えば、利用料金は下がり続け、業界全体にとって悪循環。ものが流れる過程を中心に置いた新たなサービスで付加価値をつけることで、他社との差別化を図るとともに、新しい物流ネットワークを生み出していきたい」と話してくれました。

ツアーでとても印象的だったのは、「ものではなく、人の想いを届ける」という言葉です。これまでは人手不足という言葉に影響されて効率化や省人化ばかりに目を向けていましたが、単にロボット化や宅配ボックスの利用などを進めれば万事解決というわけではないのですね。利用者の意識改革に加え、最新テクノロジーと作業員との住み分けや、荷主のニーズに合わせたサービスの区別化を進めることが、働き手の環境を整え、新しい物流の動きを作っていくことにつながるのではないかと感じました。人と人の想いを繋いでくれるサービスに感謝しながら、進化を続ける物流の未来にこれからも注目していきます。

参考記事:読売新聞 連載 「密着 Document]宅配便 走る 1~6