インターネットは便利な代物。欲しい情報がすぐ手に入ります。しかしその反面、コミュニケーションツールとしては少し気をつけなければなりません。というのも、誰が何の目的で発信しているのかを知らずに読んでしまう事が多いからです。
「集団分極化」という言葉をご存知でしょうか。集団になると冷静な判断を下せなくなり、個人でいるときよりも極端な意見形成がされてしまう現象です。集団極性化とも言い、主に心理学で使われます。
朝日新聞が4月末から5回にわたって社会面で連載した企画「発した先に」で扱っている内容からは、そうしたネット世論における集団分極化の動きが実際に見て取れると感じました。
公益社団法人・日本青年会議所(日本JC)が今年の元旦に開設した、ツイッターアカウント「宇予くん」。保守キャラクターとして過激な発言をして炎上しましたが、背景には集団分極化を煽るウェブマーケティングがありました。「右の発言、毒舌の発言で炎上させる」といったものです。注目を集める策としてはうまいのかもしれませんが、炎上させることで分極化を起こそうという手法が優れているとはとても言えません。
10日付の朝刊オピニオン欄ではこれらの連載に関連して、近年の言論にじかに接してきた3人の談話が掲載されています。
その一人、アメリカのファクトチェックメディア「ポリティファクト」事務局長のアーロン・シャロックマンさんは、社会の分断をなくすスタート地点として、ファクトチェックの推進を呼びかけています。アメリカの分断は人種や都市間の問題が基となっており、その問題を完全になくすことはほぼ不可能。発信されたものが事実であるかを究明するファクトチェックの有用性は確かだと思いますが、あくまで対症療法の処方箋に過ぎません。
分極が進めば分断につながりかねません。健全な議論空間をネット上で実現させることは不可能なのでしょうか。この「あらたにす」もディベートプロジェクトの看板を背負っている以上、正面から考えていかねばならない問題だと思います。
参考記事:
10日付 朝日新聞朝刊 (東京14版)17面(オピニオン)「揺らぐ言論の土台」
4月29日付 朝日新聞朝刊 (東京14版)1面「素性は明かさず主張拡散」、31面(社会)「「炎上」狙い過激発言」