「解散するの?消費増税するの?」─新聞の読み方

安倍晋三首相が不在の国内ではいま、年内の衆院解散・総選挙の実施が取り沙汰されています。各紙は1面で与野党の動向を伝え、公示・投開票日の日程なども詳報しています。記事を読んでいると「解散ありき」な印象を受けます。果たして本当に年内解散・総選挙はあるのでしょうか。

「選挙に向けた動きは、もう止められない」(与党、読売新聞)

「今週中にポスターの写真撮影や選挙事務所の確保を済ませる」(東海地方選出の若手議員、朝日新聞)

与党はもうすでに具体的な詰めの作業へと入っています。まだ解散・総選挙の実施が正式に決まっていない、のにです。安倍首相も「解散のタイミングについては私は何ら決めていない。私自身、解散について言及したことは一度もない」と語っています。

なのに何故、年内の解散・総選挙が既定路線として拡散されているのか。それはここにきて、安倍首相が消費増税の先送りを検討しているためです。消費税率は来年10月に10%へと引き上げることが法律で決まっています。ただ法律の付則には「経済状況によって最終判断する」趣旨の規定があります。安倍首相はこの付則に従い、景況が思うように好転していないことを理由に消費増税を先送りするのではないかとみられています。

注意してほしいことが2点あります。

①年内の衆院解散・総選挙の実施は正式に決まっていない

②消費増税の「先送り」であって「中止」ではない

1点目は前に述べたとおりです。問題は2点目。来年10月に消費増税を実施しないのであって、時期が来れば消費増税は必ずやるということです。先送りした場合の消費増税時期については、2017年4月が有力とされています。

紙上は賑わっていますが、読んでいると疑問点がいくつも浮かびます。こうした見出しが大きくなるような記事が多くなる時こそ、新聞の読み方が重要になってくると思います。

 

【参考記事】

12日付 朝日新聞朝刊(大阪14版)1面「解散風 一気」、2面「総選挙視野 議員動く」、社説「政治と増税 解散に大義はあるか」

同日付 読売新聞朝刊(同版)1面「衆院選『来月14日投開票』準備」、総合面「首相、再増税に慎重」、社説「衆院解散検討 課題を掲げて信任を求めよ」、政治面「重要法案 持越しか」

同日付 日本経済新聞朝刊(同版)1面「首相『年内の衆院選 選択肢』」、社説「消費再増税をここで延期していいのか」、総合2面「首相『勝てる時機』探る」、政治面「解散風 準備急ぐ」