皆さんは、「ピンク」にどんなイメージや思いを持っていますか。女子、かわいい、華やか、幸せ…。固定観念も雑じりますが、きっと人それぞれでしょう。私はピンク色が好きです。明るくて優しい気持ちにさせてくれるから。でも考えてみると、いつも身につけるのは薄ピンク色のものばかり。ビビッドなピンク色は苦手なようです。憧れはあるけれど、大人っぽさや華麗さは自分にないから似合わない。そう思ってしまうからかもしれません。
女の子はかわいいのがいちばんで、かわいい女の子にふさわしいのはピンク。幼いころはだからピンクが大好きで、青春時代はだからピンクが大嫌いだった。今は?大好きで大嫌い。大嫌いで大好きだ。
作家・藤野可織さんによる連載「大好きで大嫌いなピンク」。ピンクを使った美術作品などと共に日本経済新聞に掲載されています。例えば、写真家マルティン・クリマスによる「ピンクレディー」。「かわいい女の子」にあてがわれる色、という抵抗を抱いていた著者が、砕けていく人形がまとっているピンクのドレスに、「かわいい」を壊したかったかつて思いを重ねています。
ほかにも、ピンクずくめの部屋の絵に堂々とした誇らしさを感じたり、江戸時代の絵画の桜をかっこよく捉えたり、モネが描いたピンク色の夕暮れにしんとした恐れを感じたり。決して一筋縄ではいかない、色々な顔を見せる「ピンク」を、価値観や経験を交えて取り上げていきます。私も自分が絵を眺めて感じたことと重ね合わせながら、コラムを楽しんでいます。
絵画や音楽、ファッション、映画などの芸術には、気分をパッと変えてくれるようなパワーがあります。正解がないところも魅力です。作品とじっくり向き合い味わうことで、忘れかけていた自分の感情が湧き出てきたり、新たな視点や想いと出会えたりします。美術館やショッピングに行くのもいい。駅や電車にある広告を見つめるのもいい。カフェやまちで流れる音楽を聞くのもいい。たくさんの作品に触れ、考え、感じてみる。忙しい日々が続いても、そんな時間を大切にしたいものです。
参考記事:18日付 日本経済新聞 13版 36面(文化) 「美の十選 大好きで大嫌いなピンク」