思考力を測る

2021年1月から始まる大学入試共通テストの試験問題が公表されました。思考力・判断力・表現力を重視したテストは3年ほど前に筆者が受けたセンター試験の問題とは大きく異なりました。例えば筆者が現役時代に大いに苦しめられた国語では、長く難しい文章から打って変わり生徒会の規約や議題、資料などから情報を読み取るようなものになっていました。読売新聞の見出しに「難化」とありましたが、私としては「難しい」という印象よりもむしろ現行のものよりも面白いなという印象を受けました。

ただ、自分の将来を賭けて受験する高校生たちがテストを受けた印象は違います。「いまの高校の授業では解けない」といった声も上がっています。確かに、自分の経験を思い返すと、この問題が「高校の授業にしっかり取り組むことで」解けるようになるかと言われると返答に窮します。

そしてもう一つ課題として挙げられているのは記述式問題の採点。模試の採点実績を基に選ばれた採点者が2人1組で行い、2人の採点結果が一致すれば登録していくという仕組みですが、問題は「自己採点が正確にできない恐れがある」こと。自己採点の結果が二次試験の出願の判断に繋がるだけに、生徒が正確に自己採点できるよう、丁寧な採点基準を示すことが不可欠です。

教育現場や高校生にとってこの変化は好ましくないかもしれませんが、私はこの出題形式の変更はよいものだと考えます。インターネットが発達し、誰でも気軽に情報を得ることができる今、大事なのは情報を「知っていること」ではなく、「どう活用するか」ですから。まだまだ改善の余地があるとはいえ、今の社会で必要とされるスキルがあるかどうかを測ろうとする取り組みの方向性は間違っていないと思います。今後どのような改善が行われていくのか、推移を見守っていきたいと思います。

参考記事

5日付朝日新聞朝刊(京都14版)1面「大学新テスト出題一変」、2面(総合2)「知識活用に重点」、26面・27面「大学入学共通テスト 問題例」、37面(社会)「いまの授業では解けない」

 

5日付読売新聞朝刊(京都14版)1面「大学新入試 難易度高く」、2面「記述式採点に課題」、30面(特別面)「問題と正答、出題のねらい」31面(特別面)「考える力 測る」