東京―大阪間がなんと3490円から―――。2012年、国内初のLCC(格安航空会社)であるピーチ・アビエージョンが就航するという話を聞いたとき、当時中高生だった私は飛行機でこれほど安く移動できる時代が来るのかと衝撃を受けました。鮮やかなピンク色のジャケットを着てほほ笑むキャビンアテンダントの方々の映った記者会見の様子は今でも覚えています。
「安い」を全面的に売りにしてきたLCCですが、普及がひと段落した今、転機を迎えているそうです。LCCのシェアを見てみましょう。15年では全旅客数約9300万人の10.0%を奪っているものの、16年は約9400万人のうちの9.7%にとどまります。LCC市場全体が伸び悩んでいる姿が浮かびます。
この現状を打破しようと各社は新たな取り組みを始めています。ピーチは民宿や宿泊施設を貸し出すAirbnb社と提携したインターネットサイトを来春から本格的に展開します。このサイトの仕組みで面白いのが、投稿された旅先の写真を見て同じ場所に行きたいと思ったら、航空券や宿泊施設の予約に進めるというもの。まず目的地を決めてから宿泊先や移動手段を選ぶという従来のやり方とは違った新たな旅の形を提案しているのです。この他にもバニラ・エアが航空券などの購入金額に応じてポイントがたまる会員サービスを始めたり、ジェットスター・ジャパンが新サービスとして国内線で2000円、国際線で3000円支払うと当日の搭乗便を無料で変更できる「フレックスBiz」という取り組みを始めたりするなど、他社との差別化を図ろうとしています。
価格のイノベーションから旅のイノベーションへ。LCC業界の興味深い動きに注目していきたいと思います。
参考記事
7日付読売新聞朝刊(京都14版)10面(経済)「『またの搭乗を』LCC競う」