ケバブを食べながら想う

 「あなたはこの土地に住んではいけない」。もしこのような言葉を突きつけられたらあなたはどう思うでしょうか。しかもその理由が「宗教」であったとき、納得がいくでしょうか。

仏教徒が9割を占めるミャンマーでは「イスラム教徒お断り」という決まりを少なくとも21の村が作っているそうです。この取り決めの恐ろしい点は、公式に発表されているのではなく「不文律」として存在していることです。すなわち、彼らは「イスラム教はダメ」という立場を表向きでは取っていなくても、住んでいる人々の中にはイスラム教とは共存できないという思いがあるのです

こうした嫌悪感が、「モスクを建設している」という噂が流れただけで、実際は映像編集用のスタジオだった建物が破壊されることになったというような恐ろしい事実を引き起こしているのです。しかも、ミャンマーの文化宗教省の担当局長が言うように、「不文律だと政府が指導するのは難しい」。つまりこれを規制したり取り締まったりするのは困難であるということです。

 もちろん、この問題には植民地時代にまで遡る複雑な歴史的背景もあり、すぐに解決できる問題であるとは思いません。しかし、イスラム教徒を排除する決まりを作ることや、9割の人々の使うインターネットにイスラム教徒への誹謗中傷を書き込むことが、社会のあるべき姿ではないことは明らかです。

 私の大学の食堂にはイスラム教徒の留学生向けに作られたハラール認証を取得したメニューが置いてあります。学内にはお祈りをする部屋も設けられています。毎日300食も売れているケバブを食べながら、「異文化を理解することは難しいけれど、決して不可能なことではない。しかしどうしたものか・・・」と改めて思案する毎日です。

参考記事

24日付朝日新聞朝刊(京都13版)10面(国際)「イスラム教お断り」拡散