北朝鮮が核武装することに現実味を帯びてきています。トランプ政権は最近の核実験やミサイル実験を受け、北朝鮮と取引関係にある第三者までも対象にした独自制裁に踏み切りました。
すでに中国政府は国内の金融不安を懸念して、各銀行に北朝鮮との取引をやめさせており、一定の効果を上げていると見られています。しかし、今回の制裁でも核やミサイル開発自体を止めることは困難だろうとの見立てが出ています。
日米にとっての目標が北朝鮮の非核化と軍備の縮小にあるとすれば、国家存続のために核保有を国際社会に容認させることが北朝鮮のゴールでしょう。お互いの政治目標は対立しており、非核化を交渉の条件としている今では対話は行えないでしょう。そのため現状では日米に軍事オプション以外での目標達成手段はなく、平和的解決を望むなら核保有を黙認する必要が出てきます。
つまり北朝鮮問題では、「勝者を作り出すということ」が「多大な犠牲をだすこと」と同義であるということです。そんな中、一番不利な局面に立たされている韓国は日米と微妙に歩調をずらしています。韓国政府は、21日(日本時間22日)の日米間首脳会談でトランプ大統領の決断を支持しましたが、会談直前に人道支援のため乳幼児らへの医療品提供など800万ドルの資金提供を決めていたためです。
それが人道的な支援であっても核兵器開発を優先している北朝鮮にとっては開発の資金源となってしまうため、制裁の効果を損なう結果を生むでしょう。こうした日米韓の乱れは事態を悪化させる要因にもなり得るので、統率のとれた対応が必要になってくるでしょう。
そして政治に関わる私たちとしては、最も平和的な解決手段が核武装の容認なだけに「犠牲をだす」ということへの覚悟が必要になってきます。これは「軍事的オプション」を選択せよということではありません。1990から2003年まで行われた米国と国連の経済制裁を見てみると、制裁の結果少なくとも50万人以上の子供たちが犠牲になっています。制裁自体の効果はここでは問いませんが、このような結果をもたらすため覚悟が必要になるのです。
そうしたことを理解した上で、私たちが選べる選択肢は「軍事オプション」「核保有の黙認」「現状維持」の3つでしょう。すでに私たちは引き返せない領域に踏み込んでしまったようです。
参考記事:
23日付 読売新聞(東京14版)3面(総合)「米、北孤立化へ強硬」