薬物が社会を蝕む

 働き盛りの若者が仕事に就かないことを示す労働参加率の減少。これは先進国共通の課題です。経済のグローバル化に伴う製造業の衰退や技術の進歩によって低技能の労働者が不必要になってきたからです。しかし、ここで注目したいのがアメリカの落ち込みです。日米欧主要5カ国の中で唯一90%を下回っており、現在は88%台にまでなっています。一体何がこれほどまでの結果をもたらしたのでしょうか。

 米国の経済学者たちが注目するのが、「オピオイド中毒」による影響です。オピオイドとは、アヘンと同じケシ由来の成分やその化合物からつくる麻薬などを指し、モルヒネやヘロインも含みます。米当局の2015年の調査では、12歳以上の国民のうちなんと1250万人が不正使用を経験し、203万人が依存症と診断されたそうです。この年の薬物の過剰服用による死者数が2000年に比べ4倍近くに膨らんでいることからも、米国社会における薬物依存の深刻さがありありと伝わってきます。

 ただ、これは一概に「依存者だけが悪い」とは言えないようです。記事にあるように、「絶望死」が増加している地域と薬物乱用者の多い地域が被っていることからも、生きることに絶望した人々が薬物に手を染め、つかの間の快楽を得ようとしている、そんな姿がありありと浮かんできます。もちろん、「薬物は危ないからダメ、ゼッタイ」という認識を浸透させることも大切です。しかし、それだけではなく薬物に依存しないでも希望を見出せるような社会を作らないといけません。

私ひとりでできることは少ないかもしれませんが、そのような社会を作っていくために何ができるのだろう、と改めて考えさせられる記事でした。

 あなたならどうしますか?

 

参考記事

 

19日付日本経済新聞朝刊(京都14版)1面「米労働市場に異変」