差別解消の第一歩は「相手を知ること」

 キリスト教、仏教、イスラム教は世界の三大宗教といわれます。東京・池袋で12日、これら三つの宗教が一堂に会しました。

 私がボランティアとして参加しているホームレス支援団体「TENOHASI」は、月に2回、第2・第4土曜日に東池袋中央公園で炊き出しを行っています。この日は年に一度の夏祭りの日でした。路上で亡くなった方のために毎年開いている慰霊祭では、仏教式とキリスト教式の両方で祈りを捧げます。キリスト教式の時は僧侶が一緒に讃美歌を歌い、仏式の時は牧師も手を合わせていました。可能な範囲でそれぞれの式に参加する姿を見て、懐の広さを感じました。立場や宗教を超えて、故人を思う参加者の気持ちは同じだったのだと思います。
 
 慰霊祭のあとは、パキスタンから来たボランティアがかき氷をふるまったり、モスク「マスジド大塚」の皆さんがカレーの炊き出しをしてくれたりと、ムスリムの方々が大活躍しました。

 まったく同じ日に、米バージニア州シャーロッツビルでは白人至上主義を掲げるデモがありました。それに反対する市民グループと衝突が起き、1人が死亡、少なくとも34人が負傷したと記事は伝えています。白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」のメンバーなど数百人がこのデモに参加していました。

 なぜ互いの差異をありのまま認め、尊重し合うことができないのか。このような悲しい事件を耳にするたびに、もどかしくなります。差別をなくすために、何ができるのでしょうか。今日の読売新聞の7面に、そのヒントを見つけました。

 1947年の独立から長年対立してきたインドとパキスタンで、ネット電話などを利用した交流事業が広がり始めているそうです。この事業を先導する若者グループの、パキスタン側の代表ラザ・カーンさん(37)は「お互いを知れば、憎しみなんて消える」と語っています。これが、差別を解消するための大切な一歩ではないでしょうか。

 ボランティアで知り合う前は、ホームレスやムスリムの人々に対するイメージは報道やインターネットで見聞きした情報に基づいていました。差別感情はなかったつもりですが、「得体の知れない人たち」という印象がありました。言葉を交わし、笑顔を交わすようになった今、そのイメージはがらりと変わりました。巷に流布するレッテルに惑わされず、生身の関わりを通して立場の異なる人々を知ろうとする姿勢を、これからも続けていきます。

参考記事:
14日付 読売新聞朝刊 13版 2面「白人主義デモ衝突、死者」
7面「憎しみの連鎖 私が絶つ」
同日付 朝日新聞朝刊 14版 2面「白人至上主義者 反対派らと衝突」

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