同じ市なのに、道路の向こうは100キロ先と同じ選挙区

 衆議院の小選挙区のいわゆる「1票の格差」を是正するために選挙区の区割りを見直す改正公職選挙法が16日、施行されました。今回の変更は、1票の格差が2倍を超えた直近3回の衆院選を「違憲状態」と判断し是正を求めていた最高裁に応えるために実施されました。全国97の選挙区の区割りが変更されます。青森県や奈良県などではその県内の小選挙区が統合され、「0増6減」が実現します。遅くとも来年末までには衆議院議員総選挙が行われるため、各党は候補者の調整を急いでいます。

 さて、私が住む兵庫県でも選挙区の区割りが変更されます。注意深く新しい選挙区を見てみると、非常に不可解な線引きとなっています。兵庫県東部に位置する川西市は、今まで近隣の伊丹市と宝塚市とともに兵庫6区を構成していました。しかし、今回の変更に伴い、川西市北部の一部地域は隣接する兵庫5区に吸収されることになりました。実はこの兵庫5区、兵庫県北部の日本海側にある豊岡市も含まれており、最北端の同市から新しく加わった川西市の一部までは直線距離で100キロ以上離れているのです。

 関西のローカルテレビではこの事態をしばしば報じています。豊岡市の住民が「川西のことなんか知らんわ」「川西の人が求める政治とこっち(日本海側)が望む政治は違うかもな」と困惑するインタビュー映像には共感させられました。私の住む西宮市も一部が神戸市の選挙区に吸収されるため、川西市と西宮市の両市議会は「市民に混乱を招く」と変更に反対する意見書を可決しています。

 今回の見直しは、最新の人口分布に基づき実施されたため、1票の格差を小さくするためにはある程度やむを得ないでしょう。しかし、地元の実態にそぐわない、まさに「机上の理論」による手直しには限界があるでしょう。また、地方6県では全体の選挙区が削減され、その一方で、東京都の定数が大幅に増えることになります。1票の格差を是正するたびに都市部選出の議員の比重が高まる現象が進みます。

 同じ市内でも道路1本向こうは100キロ先と同じ選挙区。地方の過疎化を解消するよう努める国会議員には都市部出身が増える。こうした奇妙な選挙制度は考え直す必要があるのではないでしょうか。

参考記事:

17日付朝日新聞朝刊(14版)2面(総合)「97小選挙区 新区割りに 改正公選法施行」