連日報道され、小池旋風の一因にもなった加計学園問題。朝日新聞では、今日の朝刊も『「加計」問題 晴れぬ疑惑』と題された特集が組まれていました。追及点は、「京産大の脱落など加計学園ありきだったのではないか?」「政権の説明責任は?」「獣医学部新設の必要性は?」の三つです。これらは、事実として重視されるべきものかもしれませんが、今回は全く別の視点からこの問題を考えたいと思います。
10日、参議院の閉会審査で官邸主導を強調する前川前文科省事務次官と獣医学部の誘致を熱望していた加戸前愛媛県知事が席を並べる一幕がありました。前知事側は、狂牛病や鳥インフルエンザなどで獣医師不足が深刻になったため、学部新設を懇願していたこと、また12年も前から加計学園だけが提案してくれていたことや他の大学に相手にされなかったなど、「首相と理事長の友人関係」ではなく「加計学園と今治市の改革構想」が誘致に強く影響したと答弁しました。
これに対し前川氏は、獣医学部新設の意義が不明確な点や加計学園が獣医学部設置の「4条件」に適していないなど、疑念が拭えていないと反論しました。しかし、先に紹介した加戸氏の発言は、「首相が友人を優遇している」といった単純な問題ではないことを示しています。
文科省側の戦略的思考の不足や利権維持派と規制緩和を進める改革派の衝突など、もっと突っ込んだ議論が求められる問題が内在していると思いますが、加戸氏の発言が注目されていないことや内面部の議論が発展していかないことにこそ問題の本質があると思います。
さきに挙げた特集でも加戸氏の視点が含まれず、そこにある利権構造自体に十分なメスが入っているとは言えません。そうした報道姿勢からは、表面上の関係から加害者と弱者という構造を作りあげ、物語化してから報ずる。そして内面的な問題については、深刻になるまで放置するという構造が浮かび上がります。結果として「私たち国民自身が、知らない間に不利益を被ることになる」という悪循環を作りだしてしまっているのではないのでしょうか。
「公平中立の報道」は不可能であり、また「報道機関はそれぞれの立場の代弁者である」というのは事実ですが、特定の考えだけにとらわれず、多面的にアプローチする体制を作り上げれば、現状の悪循環から脱却できるのではないでしょうか。
16日付 朝日新聞朝刊 5面 「加計」問題 晴れぬ疑念
11日付 産経ニュース 【加戸守行氏「『加計ありき』と言うが…12年前から声をかけてくれたのは加計学園だけ」「東京の有力私学は、けんもほろろでした」】