AIと向き合う

 「これからはAIの時代だ」

このような話、最近はあちこちで聞くようになってきました。「○○という仕事は将来AIによって淘汰される」というのもよく耳にします。そしてなんと、この波が「中古ブランド品鑑定士」にも押し寄せようとしているのです。

中古ブランド品販売の大黒屋ホールディングスが人工知能「ワトソン」を使ったブランド品の鑑定を始めます。高級ブランドバッグなどの図柄や材質をを電子顕微鏡で読み取り、過去に蓄積したデータと照らし合わせて本物かどうかを判定するそうです。店で買い取った中古品を電子顕微鏡で読み取る作業を繰り返し、本物の図柄などの特徴を覚え込ませたAIでの現在の鑑定精度は95%超。国内外の全店舗で導入し、熟練を要する鑑定作業をサポートします。まず中古ブランド品市場で流通量の多いブランドバッグに導入し、時計などへの応用も検討するそうです。

 今、様々なところで議論されるAI。もちろん、人間の作業を「助ける」という部分で貢献できる領域がかなり大きいことは紛れでもない事実です。今回の例のようにかなりの熟練を要する鑑定作業を、簡単にかつ確実に済ませられるのなら会社には大きなプラスになることでしょう。しかし、すでに指摘されている様々な懸念を解消しなければならないこともまた事実です。

今回の例であれば、「簡単に鑑定できるようになったとして、プロ鑑定士が蓄積した技能や勘は本当に要らなくなるのか?」「AIの裏をかくような技術が、AIの悪用で出現しないのか?」といった素朴な懸念が残ります。AIをはじめとしたテクノロジーに対し、安易に「便利!すごい!」と飛びつくだけでなく、AIの持つ危険性ともしっかり向き合ってどう「共存」していくのかを考えないといけない。改めてそれを感じています。

 

参考記事

14日付 日本経済新聞朝刊(京都14版)14面(企業1)「中古ブランド品 鑑定士はAI