一自治体の存在感が、こんなにも大きいものか。これが率直な感想です。私の地元和歌山で、自治体の選挙がここまで大々的に取り上げられることはありません。国政選挙、ひいては日本の外交問題にまで影響を及ぼしかねない都議会議員選挙の投開票が、2日に終わりました。今日は、明暗がくっきり分かれた二つの党をみていきます。
昨日の各紙一面には、戦いに勝利し、笑みを浮かべる小池百合子氏の写真が並びました。小池氏の支持勢力は、あわせて6割超の議席を獲得しました。自らが代表に就任し、小池人気を都民ファーストへの支持へと結び付けると、告示前の狙いすましたタイミングで豊洲と築地の併用策を発表。巧妙なイメージ戦術が光りました。「食のテーマパーク」といった巧みな言葉遣いで話題を集める手法や、Twitter、Facebookにおけるきめ細やかな情報発信もさすがです。
予想以上の議席を集めた「都民ファースト」ですが、不安要素もあります。トライアスロン選手、元アナウンサー、弁護士…。当選した候補者の経歴は非常に多彩で、女性や若い世代の議員も目立ちました。議会に新たな風を吹かせてくれるのではないか、という淡い期待を抱きます。しかし、読売新聞が議員としての実力に疑問符を投げかけているように、批判的な目を持つことも大切です。
一人ひとりの議員が、自分なりの視点をもって政策作りや論戦ができるのか。小池氏が代表を退いた後の議会と知事が、距離を取りながらもまとまって変革を起こしていけるのか。今後も小池氏の絶妙なメディア戦略は続いていくでしょうから、惑わされることなく冷静に都議会の動向を見つめていきたいものです。
一方、自民党の無残な敗北に、都民の怒りがここまで大きかったのかと正直驚きました。6月の世論調査では都民ファーストと支持が拮抗していたものの、加計学園をめぐる疑惑や共謀罪の強行採決、稲田防衛相の問題発言など不祥事が相次ぎました。極め付けが急浮上した下村幹事長代行の献金疑惑。投書欄に書かれていた「オウンゴール」という言葉は、まさにこの事態をうまく表しているといえるでしょう。
「自民党に対する、厳しい叱咤と深刻に受けとめ、深く反省しなければならない。」と述べた安倍首相に対し、朝日新聞社説は「首相の『反省』は本物か」という見出しで厳しい言葉を投げかけています。
ただ、これで自民党は終わった、と見ても意味がありません。怒りの民意を数字と肌で感じた首相が、その反省をどう政治に生かしていくかが正念場です。まずは今ある不祥事に目を向けてしっかりと説明責任を果たし、しかるべき処置を講ずるべきでしょう。危機に直面した時こそ、その人の真価が問われます。第2次安倍内閣で初めて矢面に立たされた首相が、どのような姿勢と手法で国民の信頼を取り戻していくのか。私はこの点に、もっとも注目していきたいと思います。
参考記事 4日付 朝日新聞 14版 12面社説 「都議選 思い民意」
読売新聞 12版 12面気流 「おごらずと監視を」
各紙「都知事選」関連面