日本時間17日に国連・安全保障理事会の緊急会合が開かれました。追加制裁決議の採択は、中国とロシアが難色を示しているため見通しが立っていないようです。
今月2日、国務省に勤務しているエドワード・フィッシュマン(Edward Fishman)氏が興味深い記事をニューヨークタイムズ紙に投稿していました。「議会だけが北朝鮮問題を解決できる」というものです。同氏は、オバマ政権時代に核開発をしていたイランに対する制裁が成功した経験から、行動の中心を国連やホワイトハウスに置くのではなく議会に置くべきだとしています。
議会が使える最も有効な経済的武器に、対象国とビジネス関係がある、もしくは対象を支持している第三者団体のアメリカでのビジネスを制限するという二次的制裁(Secondary Sanctions)があると指摘しています。
数年前にイランの核開発が問題になりました。2011年米国議会は二次的制裁の法案を可決させ、オバマ政権がイランとビジネス関係にある中国やドイツ、イタリアなどの企業に制裁を加えるよう追い込みました。石油の取引量を見てみると、2012年には一日あたり250万バレルの取引量があったのに対して13年では110万バレルまで減少していました。この時は、中国でさえも大幅に取引量を減らしています。
北朝鮮に対する二次的制裁は、米中関係に大きな影響を与える点や議会の関心の薄さが実行への妨げになっているとフィッシャーマン氏は指摘しています。国連安保理の足並みが揃わない中、追加制裁は期待できそうにありません。また、ウラジオストクと北朝鮮の経済特区間を結ぶ貨客船「万景峰」が航行を開始したこともあり、現行の経済制裁が上手く機能するか分からないところもあります。米国議会の影響力はこの問題の鍵となるでしょう。
朝鮮半島をガスパイプラインに例えるなら、交渉のテーブルに引きずり出すための制裁はバルブです。締めすぎれば暴発し、緩めすぎればガスの漏洩につながります。周辺国がバルブを上手く調整をすることで安定させられるでしょう。しかしパイプラインはバルブの調整をすれば万全というわけではありません。冷戦期から中ロと北朝鮮の間の経済的つながりは強く、今回のロシアと北朝鮮間の定期便もそれを象徴していることです。米中が共同歩調を取ったところで、ロシアが別行動をしていれば意味をなさないものになります。
大国同士のパワーゲームがこの問題を複雑化させている要因なのは事実です。「バルカンの火薬庫」ならぬ「朝鮮の火薬庫」をどう鎮めるかが、今後、米中ロの緊急なテーマになりそうです。
参考記事:
18日付 読売新聞朝刊14版 7面(国際)「北追加制裁 米中が協議」
17日付 日経新聞 電子版 「万景峰号、第1便が出発 ロシアとの定期航路」
2日付 The New York Times 「Only Congress Can Solve the North Korea Problem」 by Edward Fishman