野球の新常識

 プロ野球・楽天ゴールデンイーグルスの快進撃が止まりません。近年は下位で低迷し続けていたにも関わらず、今シーズンは開幕1か月が経った今も勝率は7割6分2厘と首位を走っています。そして、この快走を支えているキーパーソンとしてよく名前が上がるのが2番バッターのペゲーロです。従来求められてきた2番バッターとは違った特徴を持っているのです。一体、どういうことでしょうか。

 「1番バッターは足が速い選手」「4番はホームランバッター」など、野球には打順ごとに求められる選手のイメージがあります。しかし、最近のプロ野球事情は少し異なり、送りバントや小技を求められがちな2番にペゲーロのような強打者を置く場合があるそうです。

 背景には「セイバーメトリクス」と呼ばれる野球統計学的な考え方があります。これはアスレチックスのチーム作りを描いて映画化された『マネーボール』で脚光を浴びた考え方で、膨大なデータを分析して最も合理的な戦術を探るというものです。そこには従来の「常識」を覆す考え方が多くあります。

 例えば、これまで2番の仕事とされてきた送りバントは、一概に「費用対効果」がいいとは言えないそうです。統計学が専門の鳥越規央江戸川大学客員教授が04年から13年の日本のプロ野球のデータを集計すると、無死一塁に対して、バントで走者を送った1死二塁では、イニング終了までに得点できる確率も期待できる得点も下がってしまうという結果が出たそうです。このような新常識がペゲーロのような新たな2番打者像の確立に貢献しているのかもしれません。

 もちろん、まだまだ改善の余地があります。実際、マネーボールがアメリカで出版された際にも「ベースボール宗教論争」とまで呼ばれる論争に発展した経緯があることも事実です。しかし、確かに言えるのは「一つでも多く勝ちたい」という球団の思いです。今後、勝ちたいという思いからどのような新しい発想が出てくるのでしょうか。楽しみでなりません。

参考記事

2日付 日本経済新聞朝刊(京都13版)33面(スポーツ)「2番主砲説に脚光」

2日付 読売新聞朝刊(京都13版)18面(スポーツ)「パ 波乱 プロ野球開幕1か月」