生活保護 重複受診を防ぐには

 みなさんは体調を崩したとき、すぐに病院に行きますか?
 
 筆者は病院が苦手です。そこにいるだけで気分が落ち込むし、待ち時間も長いし、想定外の出費にも繋がります。特に一人暮らしの学生の場合、手間と費用を考えてちょっとやそっとの体調不良では受診を選ぶことはないでしょう。
 
 そんな筆者ですが、最近、アルバイトに向かう途中の階段で足を滑らせて捻挫し、通勤災害として病院に通っています。普段なら「もう歩くくらいはできるんだし」と通院をやめてしまいがちな筆者でも、「お金を出してもらえるんだから、せっかくだし行くか」という気持ちになり、ずっとリハビリを続けられています。
 
 自分で医療費を負担しなくて良いとなると、医療機関受診のハードルが大幅に下がります。全額が公的負担になる生活保護受給者にも、同じメカニズムが働くことは疑いようもありません。27日の日本経済新聞では、厚生労働省が受給者の医療扶助費を減らすためのモデル事業を始めると紹介されています。医療扶助費は生活保護費の約半分を占め、その原因として、不必要に複数の医療機関を訪れ、薬を過度に処方してもらう重複処方などが考えられます。このモデル事業では、受給者が利用できる薬局を一カ所に限定するというのです。
 
 確かに、一つの薬局でしか薬が受け取れないなら、重複処方は不可能です。しかし、決まった薬局にしか行けない、というのはかなり不便なのでは、と心配になります。遠方の医療機関を受診した場合、医療機関のそばに薬局はたくさんあるのに、定められた薬局にわざわざ出向かなければならない。すぐに服用する必要がある場合なども考えると、のむのが遅れ、健康に悪い影響が生じる危険性があります。
 
 もちろん、不適切な医療機関の利用は防ぐべきです。そういった費用がかさめば、本当に必要な人たちまで扶助を受けづらくなるからです。では、他にどういった方法を取れば良いのでしょうか。
 
 問題なのは、受診時に受給者の懐が痛まないこと、受診状況を把握できないことのはずです。従って、医療費の支払いをいったん本人にしてもらうのはどうでしょうか。そして、かかった費用についての医師の証明を確認したうえで、医療費を返還する。そうすれば、必要もないのに複数の医療機関にかかることはチェックできますし、安易な受診が抑えられるはずです。
 
 受診時にお金を持っていない人は、例外的に病院が負担し、お金が戻り次第、病院に返金するという形をとることもできます。手間が増える、という批判もあるでしょうが、この方式なら健康への被害は考えられません。手続きの手間よりも何よりも、薬の服用までの手間を減らす方が、受給者のためを思った対策といえるのではないでしょうか。
 
 無駄や乱用は防がなければならなりませんが、受給者の健康もまもらなければいけない。私の提案が本当に最善のものかはわかりませんが、医療費を抑える取り組みが生活保護制度を適切に利用している人を苦しめないように祈ります。
 
 
 
参考:27日付 日本経済新聞朝刊 「生活保護 薬局一カ所限定」