「守りたい」を運転に

 先月、新聞社のインターンシップに参加した時のことです。『高齢者は75歳以上』という定義についてどう考えるか、街頭インタビューをする機会がありました。9ヶ月になる女の子を抱えながら女性(20代、山口県在住)は眉をひそめながら、こう話してくれました。元気な高齢者が増えていることに対して、喜ばしいと言う一方で「この子が生まれてから、守ることを意識するようになった。高齢者ドライバーは怖いな」と。

 たしかに女性がいうように、75歳以上が起こす死亡事故は年間約450件でさらに増えていく状態にあります。そのうち約半数は認知機能の低下が影響しているそうです。そんな高齢ドライバーの重大事故が相次ぐなか、75歳以上の運転免許保有者の認知症対策を強化する改正道路交通法が12日、施行されました。

 3年ごとの免許更新時に受ける認知機能検査で「認知症の恐れ」と判定された場合に医師の診断を義務化します。それにより認知症と診断されると免許取り消しや停止になります。警察庁は新制度で取り消しなどになる人は年約1万5千人と試算しています。

 長野県に住む私の祖父は88歳。認知症の症状はなく、元気なおじいちゃんです。回数は減りましたが、長年使っている白い車を乗りこなしています。祖母と二人暮らしで、買い物をする必要があるからです。生活のためと言っていますが、一番の理由は運転すること、働くことが好きなためだと思います。

 日本経済新聞の紙面では、NPO法人「高齢者安全運転支援研究会」(東京)の中村拓司事務局次長が「返納を求めるだけでは自尊心を傷つけ、トラブルを招く恐れもある。一定の年齢で運転技能をチェックし、客観データに基づいて自分が運転を続けられるか判断してもらう仕組みが必要だ」と指摘しています。この意見に共感しました。

 昨年11月に祖父には初めてのひ孫ができました。ぷくぷくしていてとても可愛いです。新しく生まれたひ孫のためにも、もっと長生きして欲しいものです。それには安全な運転が欠かせません。状況に応じて、返納を勧めないといけないですし、祖父や祖母が買い物に困らないための家族会議が必要です。「だれかを守りたい」という思いを大切にし、不幸な事故を少しでも減らせることを祈ります。

13日付け
朝日新聞38面(東京14版)「高齢ドライバーの認知機能 84歳の50.1% 低下のおそれ」
日本経済新聞38面(東京13版)「75歳以上、認知症対策強化 改正道交法施行 免許取り消し・停止、年1.5万人試算」
読売新聞38面(東京14版)「高齢者事故 歯止め期待 改正道交法が施行」