政治家に冗談はいらない

 「言葉や発言には気をつけなさい。そして大切にしなさい。いい言葉も悪い言葉も自分に返ってくるよ。」幼いころ、両親にそう教えられたのを思い出します。

その後、政府が持つ長靴が、えらい整備されたと聞いている。たぶん長靴業界は、だいぶもうかったんじゃないか

 内閣府政務官兼復興政務官を務めていた務台俊介氏が、自身の政治資金パーティーで耳を疑うような発言をしました。昨秋、岩手県の台風被災地に長靴を用意せずに行き、職員に背負われて水たまりを渡った姿が物議を醸しだした「おんぶ問題」。当時は自身の行為を振り返って「不適切だったと猛省している。」と語りましたが、今度の失言からは反省の色が全く見えません。軽はずみな発言がきっかけで、結局、辞任に追い込まれることになりました。

 筆者は当事者ではないため、被災者の気持ちは語れません。それでも、被害にあった方々の心情や痛み、発言をどう感じるかを想像するのは難しくはありません。しかも、務台氏は災害に直接向き合う、消防庁の課長という経歴まで持つ人物です。

 しかし、この発言からは、視察を通して大変な思いをされている方々の声に耳を傾けよう、現場をしっかり見て二次災害や再発の防止に役立てようという誠実な姿はまったく見えません。足を運んで見に行っただけという一種のパフォーマンスだったのか、とさえ思ってしまいます。

 誰かのために何かを変えたい、国を動かしたいと思って選ぶのが政治家という仕事ではないのでしょうか。私たちが信頼して国政をゆだねるためにも、人々の心に寄り添って市井の声に耳を傾ける謙虚で真摯な姿勢と、自身の発言の重みに対する自覚を常に忘れないでほしいです。

 

参考記事:310日付 朝日新聞14版 1面 「天声人語 務台政務官辞任」

                         38面「務台政務官が辞表」

              読売新聞13版 3面「務台政務官 辞任へ」

2016913日付 朝日新聞デジタル 「長靴なくて…おんぶされ被災地視察 務台内閣府政務官「猛省している」」