公立と私立の差ってなに?

 高校を選ぶ際のポイントの一つである大学への進学実績。この観点で見ると、東京では一般的に、公立高校よりも私立高校の方が優れているといわれています。ですが、この常識も数年後には間違ったものになるかもしれません。

 都立の名門、日比谷高校。その歴史は明治時代、東京府立第一中学から続いています。過去には日比谷から東京大学というのがエリートコースと言われていました。一方で、少し前までは進学実績が振るわず、低迷していました。ですが、昨年は東大合格者53名。44年ぶりの50名越えを達成し、見事に復活を遂げました。

 その実績を支えた一つの要因としては都立高校入試の変革が挙げられます。東京都は、日比谷高校をはじめ7校を、進学対策を組織的、計画的に行う「進学指導重点校」に指定しています。これらの高校は学力試験の問題を自校で作ることが認められ、難易度が高くなりました。また、内申点の換算方法も変わり、副教科(音楽・体育・技術家庭・美術)を2倍換算に。学力試験の点数のみで合否を判断する特別選考枠も廃止されました。

 このような改革の結果小さいころから塾に通い、生徒会もやるような「いい子」がトップ校に行くようになりました。確かに、都立のトップ校へ行った筆者の同級生はみな生徒会の活動をやり、学校の成績も大変よい「優等生」でした。そして、このような入学者が増えたことで、日比谷以外の6校も進学実績を伸ばしています。改革は実を結んできているといえるでしょう。

 学費の面では、公立高校のほうが私立よりもかからないとされてきました。ですが、東京都民の場合、この常識も間違ったものになります。小池都知事は、私立高校の授業料を年収760万円未満の世帯では実質無償化する方針を明らかにしています。これによって、私立が公立よりも優れているとされていた「進学実績」、公立が私立よりも優れていた「学費」と、それぞれの特色がなくなりつつあります。生き残りのために、今までの強みではなく、新しい魅力を作る必要があるでしょう 。例えば実践的な英語教育やIT教育といったような、社会が求めている力も養っていけるような授業づくりにも期待したいです。

参考記事:
4日付:朝日新聞 東京14版 22面(第二東京)「日比谷高 進学実績「復活」」