昨年の4月に、『新規制「価格が問題」本当に?』をテーマに投稿しました。過度な酒の安売りを規制する立法作業を自民党が進めているというニュースに対し、規制自体に疑問を投げかけました。あれから、1年半。財務省と国税庁は酒類の過度な安売りを防ぐため、量販店などに科す罰則の基準をまとめました。
今年の5月に酒税法と酒類業組合法の改正法が成立し、行き過ぎた安売りが法的に規制されることになりました。これを受け、財務省と国税庁が来年6月までに適用する罰則の中身を検討したのです。監督官庁が酒類メーカーや販売業者が守るべき「公正な取引の基準」を示し、製造(仕入れ)原価に人件費など酒類販売の費用を足した金額を下回って販売した場合、処罰の対象となるようです。過度な安売りをやめるよう指示し、従わなければ事業者名を公表したり、販売免許を取り消したりします。
罰則を伴う規制には、企業間の自由な競争や消費者の利益を損なう恐れもあると、日経新聞は指摘しています。この改正酒類法などは自民党の「街の酒屋さんを守る国会議員の会」が主導し、議員立法で成立しました。標的となった安売り店には「消費者が求める商品を安くする努力は、企業として当然」だという声も根強いようです。議員の視点と、小売業者の視点、どちらが優先されるべきなのでしょうか。
今は、100円均一ショップを運営する小売業や、格安で商品を販売する「ドン・キホーテ」などの業績が好調です。消費者は、「より安いもの」を求め、節約志向は一段と強まっているということでしょう。そうしたなか、主要大手のビール飲料系の出荷量は年々減少しているようです。若者の「ビール離れ」はありますが、消費者の間でビールの買い控えが進んでいるようです。たしかに、最近は大手飲料メーカーの海外進出が目立ちます。これもそうした変化を映すものでしょう。先細りの国内消費より海外市場へ、というわけです。
私は、お酒が安く買えなくなることには反対です。企業の自由競争を奪うことにも危機感を覚えます。この規制は消費者の節約志向が強まっている今の時代に見合ったものなのでしょうか。何かを頑張った後の一杯は、格別です。その「一杯」の喜びも、安売り規制が進めば奪われてしまうのでしょうか。「酒の安売り規制」は誰のためなのか。一歩立ち止まって考えたいです。
参考記事:
21日付 日本経済新聞朝刊(大阪13版)5面(経済)「酒の安売り規制 『原価+販管費』下回ると罰則」