ノーベル文学賞 受賞おめでとう 

♪片隅で聞いていたボブ・ディラン

 72年にガロが歌った、「学生街の喫茶店」の歌詞の一部です。そのボブ・ディランさんが、今年のノーベル文学賞を受賞しました。彼はアメリカのシンガーソングライターです。歌手がこの賞をもらうのは初めてです。明治大学や日本大学のキャンパスがある学生街、御茶ノ水を歩きながら、多くの日本の音楽家たちにも深い影響を与えたディランの足跡を考えていました。

 村上春樹さんの受賞を心待ちにしていたハルキストにとっては残念な日でもありましたが、日本人にとっても祝福すべき受賞だったのでしょう。今日の各社の1面を大きく飾るのはノーベル文学賞の記事でした。さっそく三省堂書店(神保町本店)では、関連の本を並べた特設コーナーを作っていました。お祝いモードがうかがえます。

 「風に吹かれて」のように反体制的な歌詞は公民権運動や反戦運動に熱心だった米国の若者の心をつかみました。彼の曲にはいつの時代になっても誰かの琴線に触れるのでしょう。

 私が聞くのは97年に発売されたアルバム「タイム・アウト・オブ・マインド」です。翌年にグラミー賞を受賞しています。特に収録されている「Make You Feel My Love」が好きです。アメリカのドラマでカバーされていたことがきっかけでした。この歌詞中の一人称である”I”の訳を、聞く気分によって変えてみます。片思いのときは「私」。想いが伝わったら「僕」にして歌ってみるみたいに。

 自身も「言葉は違う意味を持ち、また意味を変える。10年後にはまた違う意味になる」と語っています。彼の魅力は社会の様子が変わっても色あせることのない普遍性のある歌詞を生み出したことだと思います。これまでの自作曲は約600曲。馴染みがなかった人は、受賞を機に、お気に入りの本のように片隅に置いておける一曲を選んでみるものいいかもしれません。
FullSizeRender関連の本を並べた特設コーナーがありました。三省堂書店(神保町本店)にて。14日、筆者撮影。

参考記事:10月14日 各社 ボブ・ディラン氏文学賞 関連記事