日本の技術はまだ死んでいない

 「品質は日本のほうがいいんですよ!」
「アフターサービスは海外製だとあまりよくないですよ。」
「この商品には独自のサービスがあります!」
先月、家電量販店にパソコンを買いに行ったときに、店員さんから言われたフレーズです。未だに「日本製」と聞くだけで高品質で多少値段が高くても仕方がない、と思ってしまいます。

 そんな消費者の考えをよそに、日本は今、パソコンやスマートフォンなどの分野で苦境に立たされています。今月7日、富士通は来年3月末にPC部門をレノボ・グループと統合する方向となったことを各紙は報じています。かつては東芝が世界初のノートパソコンを作るなど、世界のトップを走っていた分野でした。しかし、中国や台湾メーカーが台頭し、品質にそこまでの差を出せなくなってきてしまいました。結果として2000年代後半から日本メーカーは事業を縮小、または撤退をしています。

  NECも、1990年代には国内市場で圧倒的なシェアがありましたが、事業不振のため2011年からレノボの傘下に入りました。しかし、このことが日本の技術者達の熱を再び呼び起こします。

 9日の朝日新聞では、NECの元パソコン工場で、レノボが「技術拠点」と位置付ける米沢工場を取り上げています。2013年に世界で最も軽いノートパソコンを販売しました。その重さはなんと795グラム。実際に持ってみると、片手でも簡単に持ち上げることができ、パソコンは重いという概念を掻き消すような軽さでした。実は、世界最軽量のパソコンを作る構想は傘下入りする前の08年にはありました。ですが、パソコン事業で採算が取れなくなってきたため、投資回収が見込みづらい研究にブレーキがかかってしまったため、そのときは実現に至りませんでした。

 構想を実現に変えたのはレノボでした。合弁会社のトップになった、レノボ出身のロードリック・ラビン氏は「革新的な商品開発にすぐに挑戦してほしい。目指すのは世界一だ。カネは出す。」と表明したことにより、世界最軽量のパソコンが誕生したのです。

 今の日本には、新しい面白いものを作る金銭面での余裕がないのかもしれません。収益の見込める事業のみを残して、あとは撤退。このままではせっかくまだ残っている技術が台無しになってしまいます。すぐにはカネにならない研究にも投資をする。先日ノーベル生理学・医学賞を受賞した大隈教授の願いでもあります。日本がまだまだ技術大国でいられるためにも、お金の流れを考えるべきです。

<参考記事>
9日付 朝日新聞 朝刊 4面 「NEC米沢事業場 最軽量PC、レノボと結実」
7日付 各紙朝刊 「富士通・レノボ合弁関連記事」