アメリカの力が落ちている─。国際政治のコンセンサスです。「世界の警察官」であったアメリカの外交力は、なぜ低下しているのでしょうか。
象徴的なのがイスラエルとガザの軍事衝突。ガザの保健省によると、パレスチナ人の死者数は600人を超え、泥沼の様相を呈しています。アメリカは停戦に向け調停役を担っていますが、各国の利害が複雑に絡み、事態は一向に動きません。
背景には同盟関係にあるイスラエルとの関係悪化があります。
イスラエルは昨年来、核開発問題でイランに接近する米国に不信を募らせている。イスラエルとパレスチナの和平交渉は今年4月の期限までに成果が出ず、仲介役のアメリカは面目を失った。ガザ情勢の打開に向け、アメリカが持つ選択肢は多くない。(=日本経済新聞)
手詰まり感が漂うアメリカですが、マレーシア機撃墜事件では外交の立て直しを狙っています。ロシアが支援するウクライナの親ロシア派による犯行の見方が強まり、アメリカはロシアへの攻勢を強めています。ケリー米国務長官は、親ロシア派による犯行を裏付ける証拠を数多く提示し、徹底してロシアを批判します。
このロシア批判の裏には中国の存在があります。
中国は連携相手のロシアの力が落ちれば、国際社会での立場が弱くなりかねない。関係国の駆け引きは「欧米対ロシア」に中国を巻き込んだ図式に発展しつつある。(=日本経済新聞)
両問題はアメリカにとって正念場となりそうです。11月には現政権の評価が反映される中間選挙があります。外交力の低下を国民がどう受け止めるのか。下院で過半数を割るオバマ・民主党。今回の中間選挙で上院でも過半数を割るようなことになれば、議会との関係はさらに悪化し、ますます追い込まれることになります。オバマ大統領の姿勢に変化はあるのか─。今後の動向に注目しましょう。
【参考記事】
23日付 読売新聞朝刊(大阪14版)国際面「死者600人超す」
同日付 日本経済新聞(同版)国際面「ガザ調停 絡む利害」「米、外交立て直し狙う」