泣きながら耳に手を当てるポーズ。政務活動費と聞いて、この人を思い出す方も多いのではないでしょうか。カラ出張を繰り返し、不正に政務活動費の交付を受けた野々村竜太郎元兵庫県議です。あの会見が話題になったあとにも、不正受給をし続けた地方議員が何人も富山市にいました。
政務活動費の不正受給が相次いで発覚している富山市議会では、市議が7人も辞職に追い込まれる異例の事態となっています。共通しているのは、領収書を偽造するという簡単なやり口に加え、長年の慣行になっていた点です。
偽造と聞くと難しそうな印象を受けますが、そんなことはありません。金額の欄に「2268円」と店が書いた領収書に、「2」を頭に書き加えて「22268円」にするだけです。これで2万円の不正受給になります。また、白紙の領収書を親しい店からもらい、自ら適当に書いていたケースもあります。店側は「だいぶ前から渡していた。先生の言うことを断れなかった」と話しています。また、「不正の仕方は、先輩議員から教えられた」と話す議員事務所の事務員もおり、議会内で当たり前のことになっていました。このような簡単な手法がまかり通れば、「偽造」という不正に手を染めている感覚がなくなってしまうのではないでしょうか。そして、市民の税金を使い、悪いことをしていることも忘れてしまうのでしょう。
たびたび問題になる政務活動費ですが、どのようなあり方が望ましいのでしょうか。富山市の場合、一人あたり月15万円が規定額です。しかし、自民党会派の議員の場合、3ヶ月分の45万円が前払いされ、使わなかった分を返還することになっています。この前払いの仕組みを変えるべきだと思います。初めに45万円を受け取れば、あればあるだけ使ってしまいたくなるものです。無駄が増えるのは避けられません。その方法を変え、まずは議員に立て替えてさせ、領収書が認められれば政務活動費が支払われる。これならば、お金の使い方が少しは変わるはずです。
極端かもしれませんが、政務活動費を廃止し、報酬に含める方法もあります。政務活動費は非課税ですが、報酬には課税されます。それに見合った分だけ報酬を増額させたとしても、税金を取られたうえ、手取り分の中で政治活動してください、となれば使い方を真剣に考えるのではないでしょうか。
このような問題が富山市だけで起きているとは考えられません。政務活動費のあり方を全国で考えていかなければなりません。
参考記事:
読売新聞(東京13版)「政活費不正6人辞職へ」34面(社会)
朝日新聞(東京13版)「富山市議補選へ」38面(社会)