新型コロナウイルスの感染拡大による一時的な落ち込みを挟んだものの、日本を訪れる外国人観光客の数は右肩上がりで増えています。政府観光局によると、今年5月の訪日客は前年同月比21.5%増の約369万人(推計値)で、5月としては過去最高となりました。
ただ、観光客が急増し人気観光地に集中することから交通機関の混雑やマナー違反といったオーバーツーリズムが課題となっています。
筆者が先日訪れた小樽市も、こうした問題に悩む観光地の一つです。
◯「北の商都」小樽
運河や重厚な造りの歴史的建造物からなるレトロな街並みと、札幌から電車で片道40分ほどというアクセスの良さから、小樽には多くの観光客が訪れています。
市によると、昨年度の観光客数は約807万人で、7年ぶりに800万人を超えました。宿泊客数は過去最多の約98万人で、その約3割は外国人が占めています。
筆者が訪れた日は平日の月曜日でしたが、運河周辺には多くの観光客が集まっていました。
◯観光客の偏在
街中を歩く中で課題であると感じたことは、観光客が有名スポットに偏在してしまっていることです。
美術館やかつての銀行街、海鮮料理店や土産物店が集まる運河の南側は多くの人で賑わっており、外国人観光客も多く見かけました。
一方、北側にも重要文化財の「旧日本郵船株式会社小樽支店」や鉄道遺構が保存されている「小樽市総合博物館」など多くの見所がありますが、旅行者の姿はまばらで、外国人はいませんでした。
オーバーツーリズムの要因としては、観光客数の増加だけでなく、特定の観光名所に集中していることも挙げられます。
過度の集中を解消するためにも、注目されていない観光スポットの魅力を積極的に発信し、人の流れを分散させる工夫が必要であると感じました。
観光客の集中は全国的にみられる課題であり、京都などでは公共交通機関に旅行者があふれ、地元住民の生活に支障をきたしているといいます。一方、近年ではニューヨーク・タイムズに紹介された盛岡市が海外からも注目を集めるといった事例もあります。
各地の魅力を発信し、観光客をいかに分散していくか。観光立国を目指す日本の課題となっています。
参考記事:
2025年4月5日付 北海道新聞朝刊14面「観光が生活脅かす 小樽からの報告」
2023年5月4日付 朝日新聞朝刊21面「優しさに出会う街、盛岡 ニューヨーク・タイムズ「今年行くべき52カ所」、世界で2番目に」
参考資料: