オバマ大統領に遅れること3ヶ月、今月15日に筆者も初めて広島を訪れました。市内は30度を超す真夏日であるにもかかわらず、平和記念資料館には長蛇の列が出来ていました。そこで被爆体験伝承者に話を聞きました。原爆が投下された翌年に生まれた被爆2世です。左耳の聴力を失い、結核も患ったそうです。
その方はオバマ大統領の広島での演説の一節「私が生きている間にこの目的は達成できないかもしれません」について触れました。「オバマさんが生きている間に実現しなくても、いまから動かないといけない。私だって、残りの時間を後世に原爆の恐ろしさを伝えるために生きている」。
その思いが届いたかのように、オバマ大統領が核兵器の先制不使用を宣言するかどうか検討していることが分かりました。「核なき世界」の理想に向けてまた一歩、前進したように思います。それに対し日本政府は「北朝鮮が日本に向けてミサイルを飛ばしているのに、核の抑止力を弱めてどうするのか」と米国側に伝えました。
安倍首相はオバマ大統領と広島を訪れた際、こうも言っていました。「『核兵器のない世界』を必ず実現する。その道のりが、いかに長く、いかに困難なものであろうとも、絶え間なく、努力を積み重ねていくことが、今を生きる私たちの責任であります。(中略)日本と米国が、力を合わせて、世界の人々に『希望を生み出す灯』となる。この地に立ち、オバマ大統領と共に、改めて、固く決意しています」。
矛盾を感じてなりません。いま、力を合わせる時なのではないのでしょうか。
被爆伝承者は「核保有国は強いのではない。弱虫なんだ」と言いました。
今、この状況を見る限り、弱虫なのは米国の核の傘にいる日本なのかもしれません。
参考記事
19日付 朝日新聞 13版 2面 『核先制不使用 険しき道』