人だかりの先は工事現場? 「見せる復興」で賑わう首里城

先日、旅行で訪れた沖縄の首里城付近を歩いていると、多くの観光客がいました。向かった先には二千円札のデザインでお馴染みの「守礼門」がありました。ただ、門をくぐった先にも多くの人々の姿が見えます。

守礼門(筆者撮影:2025年3月7日・那覇市)

首里城は2019年10月に発生した火災によって正殿を含む9棟が焼失し、復元作業が進む現在もかつての姿はありません。それにもかかわらず、なぜ城内も賑わっているのでしょうか。不思議に思い、門をくぐり進んでいくと大きなプレハブが目に飛び込んできました。壁には正殿の絵が描かれていることから、ここに正殿があったことがわかります。この建物は素屋根と呼ばれる仮設建築で、内部で修復工事が進められているのです。

素屋根全体(筆者撮影:2025年3月7日・那覇市)

1階から3階までの素屋根はガラス張りで中を覗けるようになっています。見学ゾーンには復元で使われる瓦や木材の展示や建築に関する説明パネルなどが設置されていました。

素屋根内外の展示・ガラス張りの内部(筆者撮影:2025年3月7日・那覇市)

ボランティアによる修復作業も再建の力になっているようです。以前からの瓦の漆喰をはがしたり、砕いて新たな瓦の原料を作ったりするなど、建材の再活用に一役買っています。県内外から多くの人々が参加し、活動を通して首里城がより身近になったことでしょう。

ボランティア参加者の声・城内展示パネルより(筆者撮影:2025年3月7日・那覇市)

沖縄のシンボルともいえる首里城が焼け落ちたことは、県民はもちろん多くの人々の心に大きな衝撃を与えました。しかし、再建までの歩みを公開し、主体的に修復を手伝うことができる「見せる復興」は首里城と我々の距離を縮める機会にもなっているように思えます。

工事は2026年秋に終了予定です。復興という今しかない瞬間を味わった今回の見学から、赤く輝く首里城の姿を想像し、再訪できる機会が待ち遠しくなりました。

☆本日を持ちまして、あらたにすでの活動を卒業します。記事をお読みいただき、誠にありがとうございました。地域の課題や振興を中心に記事を書いてきました。執筆を続けた2年間は、充実した忘れられない日々です。文章や構成、記事の視点や考え方など、至らぬ点が多かったとは思いますが、大きく成長できた活動期間でした。4月からは新聞記者として働きます。これからもあらたにすをよろしくお願いいたします。

参考記事

日本経済新聞「首里城復元、年100万人呼び込む 「城下町」にも再興の芽」(2025年2月21日)https://www.nikkei.com/article/DGXZQOJC148JV0U5A210C2000000/

読売新聞「【動画】首里城の正殿 赤色の仕上げ塗り本格化…復元工事現場を公開」(2025年2月19日)https://www.yomiuri.co.jp/local/kyushu/news/20250219-OYTNT50086/

朝日新聞「首里城復元、私たちが支える 伝統技術を継ぐ若手職人」(2025年1月31日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S16139602.html?iref=pc_ss_date_article

読売新聞「熊本城「見せる復興」で客足回復、崩れた壁や割れた瓦「今しか見られない」…宇土櫓も特別公開へ」(2024年4月9日)

https://www.yomiuri.co.jp/national/20240409-OYT1T50087/

 

参考資料

国土交通省「首里城復元の取組について」2024年5月

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/shurijo_fukugen/knj_dai8/siryou1.pdf

清水建設HP「社寺建築 始まった「見せる復興」 社寺建築 始まった「見せる復興」 首里城正殿復元整備工事」https://www.shimz.co.jp/topics/construction/item28/

首里城公園管理センター『首里城復興への想い~「首里城赤瓦漆喰剥がしボランティア」』

https://oki-park.jp/shurijo/blog/detail/6367